2022 Fiscal Year Research-status Report
独居者生活音の定期的自己学習可能な確率モデルを用いた異常検出アルゴリズムの構築
Project/Area Number |
21K02145
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 元志 秋田大学, 理工学研究科, 准教授 (50261649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生活音 / 時間-周波数解析 / 特徴抽出 / 機械学習 / クラスタリング / 確率モデル / 異常検出 |
Outline of Annual Research Achievements |
独居者の日常の生活活動音(生活音)から家屋内事故等の異常検出を目的に,生活音のクラスタを定期的に更新する方法についての検討を中心に進めた。また,夜間睡眠時の音の利用について検討した。以下に結果をまとめる。なお,本研究は秋田大学の研究倫理審査委員会の承認を受け,被験者の同意を得て行った。 (1) 生活音の確率モデルの更新方法に関する検討: はじめに,X-means法で適当なクラスタ数(今回は約100)に分類し,これまでに提案した従来法で確率モデル化を行った。その後は,半数を新しいデータに入れ替えて,k-means法で各クラスタの中心座標を初期条件としてクラスタリングを行い,確率モデルのパラメータを更新していく方法を検討した。サンプルとして,被験者1名(男性,22歳)の生活音を1日約6時間,7日間録音した。時間-周波数解析から帯域80 kHzまでの15次特徴量を求め,最初の2日分の特徴量を初期学習に用い,以降1日毎に更新した。6日目まで更新し,7日目の生活音の発生確率を求めた。6日目までの全ての音を1度に学習させた場合と比較した結果,確率の値は若干異なるが,生活音の変化に対して同様の変化が得られ,本方法の利用の可能性が示唆された。 (2) 夜間睡眠時の音に関する検討: 異常候補検出の一方法として,特異スペクトル変換の利用を検討した。超指向性マイクロフォンを用意し,被験者1名(男性,21歳)の口元から約30 cmの位置に配置して,睡眠時の呼吸音を録音した。時間-周波数解析を行い,呼吸に対応した周期的な変化を確認できたスペクトル重心,スペクトルエントロピー,などを抽出した。それぞれについて特異スペクトル変換を行い,異常度を求めた結果,寝返りや咳込んだ区間の前後で異常度が大きく変化し,通常の周期的な呼吸音から外れる音を検出できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日常生活音から家屋内事故等の異常候補検出を目的に,生活音のクラスタを定期的に更新する方法についての検討を中心に進めた。クラスタリング方法として,昨年度に検討した改良U-K-means法の利用を試みたが,大量の生活音(データ)では処理時間が膨大となり,またクラスタ数が1,2個になる場合がある,などの問題があった。そのため,計算量が少なく,適当なクラスタ数に自動分類可能なX-means法の利用に変更した。しかし,クラスタ数が非常に多くなったため100個に設定し,さらにWard法で5グループにまとめた。更新では,半数を新しいデータに入れ替えて,k-means法でクラスタリングを行う方法とした。本方法による更新型確率モデルで求めた場合と,一度に全データを学習させた場合を比較した結果,生活音の発生確率に同様の変化が得られ,本方法の利用の可能性が示唆された。しかし,X-means法の初期依存性の影響や,更新時の条件を変えた場合,より長期間の生活音の場合の継続性などについては未検討であり,今後の課題となった。 また,夜間睡眠時について,これまでは呼吸音を寝返りなどにより検出できない時間帯があったため,超指向性マイクロフォンの利用を試みた。口元から約30 cmの位置に配置することで継続的に記録できるようになったが,体動などによる雑音も増える結果となった。呼吸に対応した周期的な特徴量の特異スペクトル変換から異常度を求めた結果,咳込んだ区間などの前後で異常度が大きく変化し,呼吸音ではない音を検出できる可能性が示唆された。しかし,その音を病気や事故などの異常候補として検出するためには,その判別が必要となり,今後の課題となった。 これらの課題については,2023年度の計画に組み込み,検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,事故などの異常な状況を検出する異常検出アルゴリズムの検討を中心に行う。日中の生活音に対して,更新型確率モデルから求まる発生確率の時間変化を観察して異常候補を検出する方法を検討する。このとき,異常時の音は音量や音色が大きく変化すると考えられ,スペクトルフラックスなど他のパラメータの利用も検討する。また,検出時の識別基準(しきい値など)を適切に決める必要があり,その方法について検討を行う。これと並行して,生活音のクラスタの更新方法について,複数の方法を比較し,更新時の条件(データ数の割合など)を変えた場合,より長期間の生活音の場合の継続性などについて検討し,よりよい確率モデルの更新方法を提案する。そして,転倒などの異常を模擬した音を多数用意し,検出率(識別率)を求めて評価する。また,環境や被験者などを変えた場合についても同様の実験を行い,異常検出アルゴリズムの評価と改良を加える。夜間睡眠時の異常検出については,呼吸音を検出し,特異スペクトル変換から求まる異常度を用いた判別方法を,日中の音とは区別して検討する。また,足音から,居住者の歩行の有無を識別する方法を検討する。そして,これらの機能を異常検出システムに組み込むことを目指す。 本研究では,人の活動音の録音が必要であり,独居者数名に被験者として協力してもらう。このとき,転倒音などの異常模擬音も録音する。そのため,2023年度についても秋田大学の人を対象とした研究倫理委員会の承認を受けた。また,被験者に実験内容を十分に説明し,同意書を得た上で行う。
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