2021 Fiscal Year Research-status Report
プレバイオティクスによる大腸ALPを含む腸内環境調節作用に及ぼす脂質栄養の影響
Project/Area Number |
21K02156
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
岡崎 由佳子 藤女子大学, 人間生活学部, 教授 (80433415)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸ALP / プレバイオティクス / 大腸内環境 / 脂質栄養 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
1.プレバイオティクスによる大腸ALP活性を含む大腸内環境調節作用に,摂取脂肪の質が与える影響を検討した。実験動物として4週齢のSD系雄ラットを用いた。実験食として飽和脂肪酸含量の高い30%牛脂食及びω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い30%綿実油食を用い,それぞれの飼料に4%フルクトオリゴ糖(FOS)を添加した4群を設け,14日間飼育した。その結果,FOS無添加群においては,食餌脂肪の質の違いによる大腸ALP活性をはじめとする各種因子への影響は認められなかった。牛脂食ではFOS添加により大腸ALP活性とALP遺伝子(Alpi-1)発現および糞中Mucin含量が有意に増加したが,綿実油食ではFOS摂取による影響は認められなかった。FOS摂取による糞中Lactobacillus spp.の割合の変動も牛脂食で顕著だった。以上より,FOS摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現,Mucin含量および腸内細菌叢への影響は,綿実油食よりも牛脂食の条件で顕著であることが示された。
2.脂肪の添加レベルがオリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性と遺伝子発現に及ぼす影響について検討を加えた。4週齢のSD系雄ラットを用い,7%ラード食を基本食とし,低脂肪食として2.5%,高脂肪食として20%および40%ラード食を用い,それぞれの飼料に4%FOSを添加した4群を設け,14日間飼育した。その結果,大腸ALP活性とAlpi-1発現は,7%ラード+FOS食群と比較して2.5%ラード+FOS食群では影響が認められなかったが,20%ラード+FOS食群では大腸ALP活性が有意に高く,40%ラード+FOS食群でも同様の傾向が示された。これらの結果より,FOS摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現への影響は脂肪の添加レベルによって異なり,20%の添加量で顕著であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画に沿って,プレバイオティクスによる大腸ALPを含む腸内環境調節作用に及ぼす脂質栄養の影響について検討することができたため。当該年度の研究において,フルクトオリゴ糖(FOS)摂取による大腸ALP活性誘導と遺伝子発現の影響は,食餌脂肪として,飽和脂肪酸含量の高い牛脂食条件下で顕著であることが示された。また,FOS摂取によるMucin含量増加作用や腸内細菌類調節作用についても牛脂食の条件下で高まることが見出された。さらにFOS摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現への影響は脂肪の添加レベルによっても異なり,20%の添加量で最も高まることが新たに見出された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き,プレバイオティクスによる大腸ALPを含む腸内環境調節作用に及ぼす脂質栄養の影響について検討する。前年度までの研究で,プレバイオティクス摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現に及ぼす影響は,ω-6系多価不飽和脂肪酸含量の高い綿実油食よりも飽和脂肪酸含量の高い牛脂食で顕著であることが示された。今年度は食餌脂肪として,牛脂と同様に飽和脂肪酸含量の高いパーム油と,ω-3系多価不飽和脂肪酸含量の高い亜麻仁油を用い,プレバイオティクス摂取ラットの大腸ALP活性をはじめとする腸内環境関連因子に及ぼす影響について比較検討を行う。実験動物としてSD系雄ラットを用いる。実験食としてパーム油食あるいは亜麻仁油食を用い,それぞれの飼料にプレバイオティクスとしてオリゴ糖を添加し数週間飼育する。大腸(結腸)および盲腸組織のALP活性とALP遺伝子発現解析を行う。また,腸管ムチン含量と遺伝子発現,腸内発酵産物の有機酸含量の測定と腸内細菌類の解析を行い,前年度の研究と併せて,食餌脂肪の質がプレバイオティクスの大腸内環境に及ぼす影響を系統的に比較検討する。
また,前年度に引き続き,脂肪の添加レベルがオリゴ糖摂取ラットの大腸ALP活性をはじめとする腸内環境に及ぼす影響について検討を行う。前年度までの研究で,オリゴ糖摂取による大腸ALP活性と遺伝子発現への影響は脂肪の添加レベルによって異なり,20%の添加量で顕著であることが示された。今年度はさらに,腸管Mucin含量と遺伝子発現,腸内細菌類,盲腸内有機酸含量についても検討し,これらの因子が大腸ALP活性と同様に20%の脂肪添加量で最も高まるか否かを検討する。
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Causes of Carryover |
当該年度の計画に沿って直接経費を使用した結果,少額(1,004円)が次年度使用額として生じた。 今年度助成金と合わせ,試薬・キット類等の消耗品の購入に使用する計画である。
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