2023 Fiscal Year Research-status Report
障害青年の教育をいかに保障するか-学校と社会・就労を架橋するカリキュラムの構築-
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21K02164
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
谷 雅泰 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (80261717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 純一 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10723538)
青木 真理 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (50263877)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 就労支援 / 障害青年 / デンマーク |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的にコロナ禍がほぼ収束したことで、この科研の期間中としては3年目で初めてデンマークでの現地調査を9月に行うことができた。これまでの2年間は、文献調査とオンラインによるインタビュー調査を行ってきたので、その成果に基づき、対象を絞って調査対象を選択した。訪問したのは、1)若者ガイダンスセンターの廃止後、義務教育修了、あるいは修了していない若者を就労に結びつける役割を果たすKUI、2)義務教育修了後の10年生クラスの中で、職業教育・訓練につなげることを目的に新設されたEUD10、3)義務教育を修了していない若者をその先の教育や就労に結びつけることを目的に新設されたFGU、4)障害のある若者、および保護者による当事者団体の役員。 2015年頃に相次いで行われた教育改革については、技術者などの労働者不足解消のために、若者への教育・訓練を充実させ、就労へと結びつける政策があるものと考えられる。その後の状況を見ると、EUD10については今回訪問できた学校のように、職業教育の学校のコースとして位置づけられるケースはまま見られるものの、あるKUIにインタビューした際にはその自治体の中に一校もないという回答も得られており、デンマークで10年生クラスに進学する割合の高さ(エフタスコーレなどその他の学校も含めると、半数以上が義務教育後に経験する)に比べると、必ずしも成功しているとは言いがたい。一方で、新しく作られたFGUについてはそれなりに定着し始めているようであった。 障害者による当事者団体については、あらかじめ文献調査で行った障害者権利条約におけるデンマークと日本の対応の比較も含め、両国の違いが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4年間の期間中の前半2年間はコロナ禍の影響で現地調査が行えなかったので、文献調査とオンラインによるインタビュー調査に限られていたが、今回、調査の機会を得られたので、その成果を中心に、最終年度である来年度に研究成果を出版する予定で準備している。2017年に出版した著書の続編とするべく、国民学校改革のその後、KUIの利点と問題点、障害者観のデンマークと日本との比較、などについての所見を明らかにする。 日本においても、高校(特別支援学校高等部)終了後の若者をすぐに就労させるのではなく、大学や専門学校にあたる期間の障害者の学びの場が増えてきている。それだけニーズが大きいことの表れでもあるし、障害者支援の仕組みの利用が広がってきているということでもある。福島でもこの科研の研究期間中にすでに複数の学びの場が誕生しており、それらの学校に調査に行くとともに、経営者とも意見交換を重ねてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度はこれまでの研究の成果を発表することを中心とする。研究成果の出版については23年度中から研究会を重ねて内容の確認を行ってきており、2024年度の半ば頃には刊行の予定である。若者教育ガイダンスセンターを廃止して基礎自治体に置かれたKUI、教育と職業を架橋する教育機関として、義務教育未修了の若者を対象として新しく設置されたFGUの紹介、障害当事者の団体のインタビューなどが主な内容となる。また、2015年の国民学校改革後の状況についても検証する。 刊行後、日本でシンポジウムを開催することも検討している。2017年に前著を刊行して以降、日本での北欧ブームも関係し、デンマーク、あるいはデンマークの教育に関する本や論文が多く出版されている。しかし、それらを著している研究者間の交流はあまり盛んではなく、出版物を通じての交流にとどまっている。このシンポジウムを機に、それらの研究者同士の意見交換を行い、デンマークの教育に関する研究の飛躍を目指したい。
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Causes of Carryover |
本研究課題の研究期間の前半がコロナ禍の最中であったため、現地調査のために見込んでいた旅費が執行できず翌年度に回さざるを得なかったことが、今年度の執行残にも影響している。その期間は文献調査とオンラインによるインタビュー調査を中心とし、今年度、現地調査を行った。次年度使用額については、主に研究成果の発表(出版物の刊行)を計画しており、すでに翌年度分の助成金と併せた額で見積もりもとっている。
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Remarks |
講演 髙橋純一 7月 福島地区特別支援教育研究会 障がい理解と支援 同 8月 福島県身体障がい者福祉協会 子どもの主観的体験を「理解しようとする」ことの重要性
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