2021 Fiscal Year Research-status Report
「森のようちえん」の無償化と義務教育段階への展開にみる保育・学校制度の変容
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21K02176
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Research Institution | Tohoku Bunkyo College |
Principal Investigator |
下村 一彦 東北文教大学, 人間科学部, 准教授 (40389698)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 森のようちえん / オルタナティブスクール / 民営化 / 園選択 / 学校選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
学会での口頭発表にまで至った成果が2件ある。 1件目は、日本保育学会第75回大会での自由研究発表「保育無償化政策下での森のようちえんの動向と新たな運営形態」である。全国アンケートを通して構築した「森のようちえん」の設置運営形態のデータベースへの分析と、その注目事例である公立保育所を「森のようちえん」として民営化した事例への調査を分析した成果である。全国調査を通して特徴的な民営化事例を把握できたこと、また事例調査では園や行政関係者だけでなく民営化初年度の保護者アンケートも実施できたことで、保育制度における今後の「森のようちえん」の普及を考える一つの起点となる分析・研究を進められたと考えている。 2件目は、東北教育学会第78回大会での自由研究発表「‘森のようちえん’ 運営団体による小学校段階の児童への支援・教育」である。全国アンケートを通して構築した「森のようちえん」からの小学校段階への展開のデータベースへの分析と、その注目事例であるオルタナティブスクールへの調査を分析した成果である。全国調査を通して、「森のようちえん」が設立した小学校やオルタナティブスクールが必ずしも卒園児の進学先や卒園時からの在学となっていない傾向を把握できたこと、その中で積極的な選択肢となっている事例に関して保護者アンケートを実施できたことで、森のようちえんから小学校への展開の意義と加害をより明確にできたと考えている。 両発表共に論文化しての投稿準備も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定通り全国の「森のようちえん」の設置・運営状況、小学校以降への展開のアンケート調査を実施し、55%にあたる160施設・団体からえた回答情報のデータベース化を行った。 事例研究では、初年度は就学前段階を中心に行政との関りが大きい地方裁量型認定こども園の事例を扱うことを想定していたが、データベースにおいて傾向や特徴的な事例が想定よりも明確化できたことから、行政との関りが大きく、地域への影響も大きい公立園民営化の事例を訪問調査対象に選定した。民営化初年度の(前後比較が可能な)保護者アンケートが実施できたことは重要な成果と認識している。また、研究計画では初年度には予定していなかった小学校段階の事例研究も進めることができた。 上述のように現場への調査は想定以上の進捗を得られ、訪問調査の成果も全国アンケートの分析と合わせて学会発表にまで進められた。しかし、自治体への全国調査は、アンケートの質問項目の設定にも問題があり、思うような回収が得られなかったため、データベースの構築には至っていない。ただし、上記民営化事例での自治体への聞き取りなど、個別の調査は一定程度進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
データベースの構築を通して、公立園の民営化を受託する事例を把握できたことから、保育無償化への対応として、認可園や地方裁量型認定こども園に移行した事例と合わせて事例調査を行う。特に、初年度の民営化事例は<移管>であったことから、<委託>形態の事例研究を進めることで、比較検討を通して研究の深化を図る。 また、小学校以降への展開に関しても、オルタナティブスクール等の事例分析を蓄積する。そこでは、公教育での位置づけ・役割を卒園児の実際の動向からも把握したいと考えている。初年度の事例研究においても、園を介して在園・在校の保護者の協力を得て、オルタナティブスクール進学理由や不進学理由を把握できたのだが、私立小学校を運営する「森のようちえん」から卒園児の追跡調査への協力の申し出を受けてり、森のようちえん卒園時(小学校入学時点)に止まらない長期的な視点で「森のようちえん」や「森のようちえん」立の小学校の意義や位置づけを検証できるデータの収集を行えると考えている。(研究計画の変更ではなく、研究手法・分析データの追加と認識している。)
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Causes of Carryover |
認可外保育施設として「森のようちえん」に取り組んでいた園が認可園となった事例の訪問調査を2022年2月に予定(研究費の残額の関係で、全額ではなく旅費の一部を申請)していたが、新型コロナ感染拡大による蔓延防止措置の対象地域に立地する園であったため訪問を自粛した。 感染症の状況次第ではあるが、次年度以降となっても訪問調査は快諾頂いており、認可園化の重要な事例として2022年6月に訪問調査を予定している。
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