2021 Fiscal Year Research-status Report
ジョン・デューイ「デモクラシーと教育」の理念と現実に関する教育政治学的研究
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21K02189
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Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
石田 雅樹 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10626914)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジョン・デューイ / デモクラシーと教育 / アメリカニズム / 全体主義 / 社会主義 / 効率と公正 / 主権者教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ジョン・デューイにおける「デモクラシーと教育」論の時代的変貌に注目し、1910年代・20年代・30年代における言説変容を検証した。これまでの研究では、初期デューイの議論、とりわけ『デモクラシーと教育』(1916)への注目からその言説変容について十分な考察は行われてこなかった。本研究は1930年代におけるデューイのデモクラシー論の変質、いわゆる「社会主義デモクラシー」の変質に注目し、それに伴い「デモクラシーと教育」がどのような変貌を遂げたかを明らかにし、その意義を考察した。その論稿は既に査読誌に受理されており、今後掲載される予定である(「デモクラシーを持続可能にする教育、デモクラシーの危機と対峙する教育ーージョン・デューイ「デモクラシーと教育」再考」『社会思想史研究』第46号、2022年予定)。 またこの「デモクラシーと教育」の問題を現在の学校教育の文脈に当てはめ、現行の中学社会公民分野の教科書を批判的に考察する取り組みも行った。この点について、中学校社会公民分野の単元「効率」「公正」概念に注目し、政治学的視点から分析を行うことで、同単元の意義と問題点を提示した(学会報告「中学校社会科公民分野「効率」と「公正」概念に関する政治学的考察:「対立」を「合意」に導く民主的プロセスには何が必要か」(日本公民教育学会、2021年6月))。また同報告を元に論稿を作成した(「対立を合意に導く民主的プロセスをどのように教えるか:中学校社会公民的分野「対立と合意」「効率と公正」に関する政治学的考察」『宮城教育大学紀要』第56巻、2022年)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、ジョン・デューイにおける「デモクラシーと教育」の時代的変遷に取り組み、理論的枠組みを把握しその意義を明らかにすることができた。これは当初予定していた本年度の研究計画、すなわち1920年代の進歩主義教育におけるデューイの「デモクラシーと教育」を探る試みとは若干異なるものの、それに代わる大きな研究成果となった。またこれとは別に、学校教育における実践的展開についても、公民教科書単元の批判的考察と主権者教育への展開の可能性など当初予定していなかった研究成果を挙げることができた。以上のような点から、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果から、デューイにおける「全体主義」批判と「闘うデモクラシー」の位置づけを明らかにすることができた。それに伴い、当初の計画では来年度令和5年度に予定していた全体主義に対峙する「デモクラシーと教育」(1930-1940年代)の研究を前倒しで行うことができるようになった。この問題について、今年度の計画として予定しているアメリカ高等教育における「デモクラシーと教育」(1930年代)のテーマと並行して、取り組むことにしたい。
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