2022 Fiscal Year Research-status Report
ジョン・デューイ「デモクラシーと教育」の理念と現実に関する教育政治学的研究
Project/Area Number |
21K02189
|
Research Institution | Miyagi University of Education |
Principal Investigator |
石田 雅樹 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10626914)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ジョン・デューイ / ロバート・M・ハッチンズ / アメリカ高等教育 / 進歩主義教育 / リップマン=デューイ論争 / ハンナ・アーレント |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、当初の年度計画で設定していた研究テーマ「アメリカ高等教育におけるデモクラシーと教育」について、ジョン・デューイとロバート・M・ハッチンズとの比較研究に取り組み一定の成果を挙げた。高等教育の在り方をめぐる両者の対立については、「デューイ=ハッチンズ」論争としてこれまで注目されてきたが、本研究ではこの「論争」の背後にある両者の合意点、すなわちデモクラシーと教育おいて合意が形成される部分を明らかにした(石田雅樹「アメリカ高等教育をめぐる対話 : 「デューイ-ハッチンズ論争」再考」『宮城教育大学紀要』57, 2023年)。 またデューイが20世紀初等のアメリカ教育行政に関してどのような批判的応答を行ったかについての研究も行った。当時のアメリカにおける教育改革、具体的には職業教育運動、教育測定運動、そして学校運営のナショナルな統合は、いずれも皆「効率性」という視点から教育変革を志向するものであるが、デューイはそれらに対して「効率性」を批判すると同時に、それを「デモクラシー」に取り込む試みを行ったことを論証した(「ジョン・デューイにおける教育と行政 ---デモクラシーと効率性の視点から」(日本デューイ学会第65回研究大会報告、2022年9月24ー25日) これらに加えて、デューイとW・リップマンとのあいだで生じたとされる「リップマン=デューイ」論争について、メディア・リテラシーの視点から再考する研究にも取り組んだ。1920年代に「公衆」と「世論」デモクラシーの在り方をめぐって批判的応答を行ったという従来の解釈とは異なり、1920年代での両者の議論は親和的であり、むしろ1930年代においてその対立が先鋭化するという解釈を提示した。現在、学会誌に査読論文として投稿中であり、査読コメントを元に修正し再投稿する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の概要で記したように、当初予定していた研究に加えて2つのデューイ研究に取り組み一定の成果を上げることができた。またこの他に10月にはハンナ・アーレントとジョン・ロールズをめぐる比較研究について研究報告を行うことができた。このアーレント論は2023年度の研究を先取りするものである。以上から「当初の計画以上に進展している」と評価を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の年度研究計画テーマ「全体主義に対峙する「デモクラシーと教育」に沿って、デューイとアーレントにおける「デモクラシーと教育」論に取り組む予定である。 また今年度は本研究の最後の年度として、デューイにおける「デモクラシーと教育」の理念と現実についての取りまとめを行う。その理論的独自性と現代的意義について、「進歩主義教育での学校改革におけるデモクラシー」「アメリカ高等教育におけるデモクラシー」「全体主義に対峙するデモクラシー」の三つの論点から明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
海外図書の購入時に際して、当初の見積から決済時に価格の修正があり、結果的に残額として3637円が生じることになった。繰越額については、2023年度予算と合わせて消耗品として適切に執行する予定である。
|
Research Products
(4 results)