2021 Fiscal Year Research-status Report
帝国日本から戦後国民政府へ-学校教育の接収と再編-
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21K02199
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
山本 一生 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (70722578)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 教育史 / 対日協力政権 / 山東省青島 / 帝国日本 |
Outline of Annual Research Achievements |
1年目の本年は、これまで収集した資料の整理と基礎的研究に力点を置いた。まず「青島における小中学校生徒の作文-中華民国臨時政府期を中心に-」『歴史評論』(857号、2021年8月)をまとめた。中華民国臨時政府期(1937-1940) の青島における初等教育を主な対象とし、生徒が『青島教育週刊』に記した作文を分析することで、対日協力政権 による教育の実態を解明することを目的とした。その結果、作文執筆者の所属校は市区部の小中学校に偏っていたことを確認し、これらの学校に「青島治安維持会教育指導官」が派遣されて日本語教育を重視したこと、作文には教育指導官は本職の日本語教師ではなく、校長と同等の存在と見ていたことを明らかにした。 また、かつて収集した名簿史料を用い、「戦後国民政府期における青島の中等学校教職員―華北占領期からの連続性を中心に」『中国研究月報』(76巻1号、2022年1月)にまとめた。本稿では、青島を対象に中等学校教職員としての身分がどのように保障されたのか、名簿史料を基に華北占領期(1937-45)との連続性から捉えることを試みた。分析対象とする中等学校は、市立中学校と市立女子中学校の公立中学2校、礼賢・崇徳・文徳女子・聖功女子の私立中学4校である。これらの中等学校の教職員の連続勤務した割合の差を考察した。その結果、私立中学4校を比較すると、礼賢中学と他の3校で教職員の連続勤務率に違いが見られた。ドイツ系だった礼賢中学は、連続勤務教職員の割合が半数近くになった。崇徳・文徳女子・聖功女子の3校はいずれもアメリカ系で戦時中に市立中学に改組されたことが影響し、教職員の連続勤務率は約2割に留まった。このように、青島では他の中等学校と比べて、礼賢中学の教職員身分の保持率が高いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理由として、すでに収集した資料を活用して成果をまとめることができたことが挙げられる。「青島における小中学校生徒の作文-中華民国臨時政府期を中心に-」では、『青島教育週刊』という収集済み資料を活用できた。「戦後国民政府期における青島の中等学校教職員―華北占領期からの連続性を中心に」では、かつて青島市の公文書館で入手した史料を活用できた。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の現在、海外での資料調査は事実上不可能である。そのため新規の資料収集を行うことは現実的ではないため、引き続き収集済みの資料を整理し、成果を上げたい。
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Research Products
(9 results)