2023 Fiscal Year Research-status Report
Sozo Kurahashi's Views of Art Education
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21K02200
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Research Institution | University of Niigata Prefecture |
Principal Investigator |
神谷 睦代 新潟県立大学, 人間生活学部, 准教授 (00803248)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 倉橋惣三 / 幼児教育 / 芸術教育 / 児童芸術 / 文化教育 / 幼年絵雑誌 / 造形表現 / 製作 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、倉橋惣三の「芸術教育観」について、関連文献・資料等を基に、次の研究計画(1)から(4)の段階的な調査によってその具体的様相や倉橋の幼児教育思想における位置づけ・意味を明らかにしようとするものである。(1)倉橋の幼児教育理論に対する評価や現代的意義についての整理(倉橋惣三研究の動向と現状)(2)倉橋の芸術教育論における「児童芸術」概念内容及びその理論的背景の検討(3)倉橋惣三の芸術教育観-『児童芸術』概念の歴史的意義(4)倉橋の芸術教育論と幼児教育思想・理念における位置づけ(「生活」「幼稚園教育」「児童芸術」それぞれの理論的連関)とそこで目指していたもの・倉橋の芸術教育観の重要性と現代的意義についての検討。最後に研究成果を書籍化する。 現時点まで、研究計画(1)から(3)に相応する下記①~⑥について研究成果を発表した。①倉橋の粘土造形教育観(学会発表)2020・22年 ②倉橋の粘土造形教育観の史的背景(学会発表)2021年 ③倉橋の主な芸術教育に関する著書とその史的背景(学会発表)2022年 ④倉橋の幼年絵雑誌に求めた芸術性(学術論文)2023年 ⑤倉橋の童画観及び画家・武井武雄への思想的影響等(学会発表)2023年 ⑥倉橋の児童画観・図画教育論(学術論文)2024年。①②④⑤⑥は、主に造形教育の分野に関係しているが、その理由は以下の2点である。1点目は、倉橋は幼稚園教育の中心に「製作」を位置づけたことから、倉橋の幼児教育方法・芸術教育へのアプローチは、造形活動が大きな切り口となり得る。2点目は、倉橋が芸術教育や芸術性を論じる場合に音楽等他の表現分野に比較して絵画や製作・粘土等の造形表現的事象が多い。 これらの研究により倉橋の「児童芸術」の概念内容やねらい、倉橋の芸術教育観の特徴・先進性(その社会的・思想的背景等も含めて)等を概ね掌握するに至った
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究状況については、2023年度は新型ウイルス感染所(コロナ)が第5類への移行によって、大学図書館等の入場制限がなくなり、また交通や対面集会についても以前の状況にほぼ戻ったことから、資料の収集が捗った。また学会・研究会などで多くの研究者から研究方法や内容に関する助言や筆者の研究に直接的に繋がる先行研究等の有益な情報を授かったことによって、研究は順調に進行している。 研究内容について現時点では、研究計画(1)~(3)段階の範囲に亙って研究成果を得ているが一方で、いくつかの調査案件が残されている。具体的には、倉橋に関する先行研究・関連文献の整理、倉橋の芸術思想形成に影響を及ぼした社会背景や思想等である。研究成果によって、次なる方向が見えると共に、それに必要な調査案件も増加する傾向があるためで、これらは本年も継続して行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は計画(4)の研究を行う。主として「「生活」「幼稚園教育」「芸術」の関係性と倉橋の「幼児の美的経験」に対する思想の検討である。さらに、これらの相互関係によって浮彫となる、倉橋の幼児教育の根底にあるねらいを明示する。一方、現代的意義については、「レッジョ・エミリア教育」等アート的教育法の日本的受容・理解の様相及び幼児造形表現と芸術・アートとの関連について調査を行う。さらに、これら調査結果と倉橋の芸術教育思想を対比させ、類似点等について考察する。また、(1)から(3)の研究で残された、倉橋に関する先行研究の整理、倉橋の思想形成に関する研究(フレーベル、児童心理学研究、美学者菅原教造の影響等)も継続して行っていく。なお、本年は事業期間の最終年度となるため、以上の研究と同時進行で、これまでの研究成果を体系的にまとめ、書籍化するための手続きを行う。 以上の研究を円滑に進めるために、学会発表・論文執筆などの目標点を定めることによって、期日を区切りながら計画的に行うようにする。書籍化については、経験者より助言を受けながらその企画及び手続きを進めるようにする。資料収集の面では、可能な場合は勤務大学の図書館を通じて入手する等、時間や経費の節約を図りたい。
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Causes of Carryover |
理由は次の①②③である。①研究に必要な文献・資料の入手費用(購入費・コピー費・郵送費・旅費等)②学会参加費・旅費③論文執筆費用(掲載料・英文校閲等)④事務的経費(通信・郵送費・データ等保存にかかる費用・プリンターインク代・ファイル等)⑤研究成果の書籍化費用(図書刊行費・打合せのための費用・謝金等)。使用計画①について、研究の主となる文献は、常に手元において確認を必要とするために購入する。貸出禁の文献(倉橋文庫・国際こども図書館等)は、コピーにより入手する。その場合は、居住地(新潟市)から都内への旅費がかかる。②について、2025年3月に岡山大学にて開催される美術科教育学会において口頭発表を行う予定である。③について、一つの学会誌に論文を投稿する予定である。④について、研究に関する事務用品として、印刷用紙・プリンターインク・データ保存用のメディア等は最終年度であることから、研究全体のまとめ用として例年の3倍程度必要になると予想される。⑤について、研究成果の書籍化では図書刊行費用・出版社との打ち合わせ用の旅費・書類の郵送費・校正やレイアウト・装丁に対する謝金等が必要である。なお、これまでの繰越金は、古書入手の場合(希少本は定価より高い場合がある)の補填や図書刊行おける物価高騰の影響への対策費用、研究の進展上必要となった取材費や文献の購入等に使用する。
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