2023 Fiscal Year Research-status Report
西洋教育思想の受容過程の検討をとおした教育思想史像の再構築
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21K02205
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
岸本 智典 鶴見大学, 文学部, 准教授 (50757713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 康雄 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50168499) [Withdrawn]
相馬 伸一 佛教大学, 教育学部, 教授 (90268657)
生澤 繁樹 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (70460623)
小山 裕樹 聖心女子大学, 現代教養学部, 准教授 (60755445)
河野 桃子 日本大学, 文理学部, 准教授 (10710098)
関根 宏朗 明治大学, 文学部, 専任准教授 (50624384)
高宮 正貴 大阪体育大学, 教育学部, 准教授 (20707145)
吉野 敦 大分大学, 教育学部, 准教授 (80954172)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 教育思想史 / 西洋教育思想 / 歴史叙述 / メタヒストリー / 教職教養 / 教員養成 / 教育原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5(2023)年度においては、共著への寄稿2点、雑誌論文12点(書評2を含む)、学会発表5点、という実績があがった。 研究組織共同の取り組みとしては、2023年9月1日(金)に2023年度第1回全体研究会(於:オンライン)を、2024年3月9日(土)に第2回全体研究会(於:宮崎大学木花キャンパス)を開催し、また、2023年9月16日(土)には教育思想史学会第33回大会(於:同志社大学新町キャンパス)において報告をおこなった。 第1回全体研究会では、3件の報告がなされ(小山裕樹「ヘルバルト及びヘルバルト主義教育学における「科学(学問)」と「政治」の連関と断絶?―ヘルバルト主義教育学のフランス(及びイギリス)への流入過程も視野に入れながら」、髙宮正貴「アレキサンダー・ベインにおける教育と科学―スペンサーとの比較から」、吉野敦「コンペイレにおける「教育の科学」と「教育学の歴史」」)、その後、科研の分担者・協力者を含む参加者全体での討議がおこなわれた。これは9月におこなわれる上述の学会報告のプレ報告という位置づけであり、改訂作業を経て9月16日の本番では小山、吉野、髙宮と報告順序も調整し、それぞれ上述の報告のより洗練された内容が報告された。 第2回研究会では、こうした学会での報告を反省しつつも、新たに3件の報告がなされた。河野桃子「シュタイナー学校はどのようにシュタイナー学校になったのか:H.ツァンダーによる指摘から」、今井康雄「ニーチェにおける教育と自己形成―「自然」の位置づけをめぐって」、関根宏明「丸山眞男の「思想史」観―『思想史の方法と対象』(1961)を手がかりに」である。いずれの報告も本科研が課題とする教育思想史叙述の比較検討にそれぞれ資するものであり、議論も含めて極めて有意義な研究会となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度も、予定していた全体研究会を2回開催したことに加えて、研究組織共同での学会発表を実施することができた。内容としては、上述の通り、イギリス関連が2件、ドイツ関連が4件、フランス関連が2件であった。ドイツ関連が多いのは、昨年度の報告にも記したようにこれまでの取り組みでドイツ関連の成果が少なかったことを踏まえての結果である。上述の各報告は本研究課題を推進する上で重要な知見が個別に報告されたものであり、また、それらの多くは論文としてすでに刊行もされていて、成果として十分に評価できるものである。 他方で、今年度はアメリカ教育思想史に関わるものが結果として少なくなったので、それを勘案して2024年度の計画を再編成しているところである。また、個別報告を俯瞰的に捉え、教育思想史叙述の新たな形態を構想する報告も現状まだ十分とは言えない。これらを踏まえて、下記の推進方策を練っていく。 なお、2023年度も、COVID‐19感染症拡大への対応を継続しつつ、学会や研究会で対面形式を継続し、研究分担者・協力者間の密なコミュニケーションや情報交換をおこなうことができたことは特筆しておきたい。 以上の理由より、区分(2)「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは今年度も、全体での研究会および学会報告を着実に実施していく。2024年度は第一に、8月に全体研究会を実施し、①ドイツ教育思想史に関連するシュタイナーの思想やシュタイナー学校での実践について、②アメリカ教育思想史におけるリヴィジョニズムの問題の再考やデューイ思想と教育実践・社会運動・政治的実践とのつながりについて、それぞれ特徴を明らかにしつつ、それらの相互関係についても整理することを目指す。そこでの議論を踏まえて、9月には教育思想史学会で同内容を発展・洗練させたものを報告する。また、感染症拡大等や円安の激化といった為替の状況次第ではあるが、米国での調査をはじめとする海外における資料調査や、海外へ向けた研究成果の発信も進めたい。状況の変化に適切に対応し、国内外の研究会や学会での報告、国内外での資料調査について、場合によってはオンラインも活用しながら当初の目標を達成できるように柔軟かつ機敏に対応していく。
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Causes of Carryover |
Covid-19感染症拡大は落ち着いたものの、円安の激化や諸外国の物価上昇といった状況下において、本年度は国外の出張に制限が生じたため、旅費の使用が抑制され、代わりに使用額の多くを国内研究会・学会等のための旅費や図書購入を中心とする資料収集費用へと配分した。繰り越した額は、状況が好転した折に海外への資料調査をはじめとした渡航旅費へとあてる計画である。
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