2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of Disaster Prevention Program in Educational Profession Training and its Global Diffusion
Project/Area Number |
21K02220
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
野元 弘幸 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (70261873)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 防災教育 / 被災地訪問学習 / 教員養成 / 社会教育主事養成 / 防災行動計画 / ニュージーランド / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、首都直下地震や南海トラフ地震などの巨大地震に伴い想定される災害を最小限に食い止めるための学校や地域での防災の取り組みにおいて、中核的で指導的な役割を果たすことが求められる教員や社会教育職員の養成や研修における防災教育の充実を目指して、そのプログラムの開発と国際的展開を行うことにある。今年度は2年目で、防災教育プログラムの具体的展開を検討するための実験的授業実践に取り組み、その成果を論文としてまとめた。東京都立大学人文社会学部の2022年度前期専門科目「教育学特殊講義Ⅰ」(選択科目)で、学部生11名、大学院生1名の計12名を対象に、以下の内容(概要)で実施した。防災の取り組みの基礎―「自助」「共助」「公助」―、東日本大震災の経験に学ぶ(被災地からの報告)、地域での防災の取り組み(自治会での取り組みを中心に)、鉄道防災教育、防災行動計画づくり。これに加えて、夏季休業中の9月に宮城県石巻市や大船渡市で、講義と連携した被災地訪問学習を実施した。 得られた成果は以下の通りである。受講生のほとんどが防災に関する意識と実践力を高めることができ、教育専門職員養成課程におけるプログラムとして有効なプログラムであることがわかった。「必修科目にすべき」「半期では不十分で通年としても良い」など受講生の評価は高かった。 プログラムの柱である「マイ防災行動計画」づくりと実施、自己評価は、受講生にとって、講義で学んだことをもとに自らの防災に主体的に取り組む契機となっていた。また、被災地訪問学習では、講義で話された内容のうち、震災の経験に関する生々しい証言や語りを現地で聞くことができ、受講生にとっては災害を「自分ゴト」として捉える機会をなっていた。 3年目は、この防災教育プロブラムを継続的に実施して質の向上を図るとともに、国際的展開についてニュージーランドと共同研究を実施する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目の研究は、1年目の基礎的な研究とプログラム実施に向けての準備をもとに、具体的に防災教育プログラムを実験的に展開して分析することを目標とした。東京都立大学での単位取得を伴う授業として、質の高いプログラムを実施できた。また、そこから教員専門職員養成課程での防災教育プログラムづくりに関わる貴重な研究成果を得られたことから、研究が順調に進捗したと自己評価できる。 しかしながら、計画通りにはいかず、課題として次年度に残された課題もあった。一つは、救急救命講習や学内での消火栓・消火器の扱いなど、技術習得も視野に入れたプログラム構成を予定していたが、実施できなかった。これは、大学の危機管理部門との連携が不十分であったことと、大学自体が学生を防災の取り組みの主体として捉えていないという根本問題に直面したことが理由である。 第二に、プログラムの国際的展開については、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外(主にニュージーランド)との交流が十分にできなかったために、3年目に向けての準備が遅れた点である。ニュージーランドの防災職員が2名来日し、本研究の被災地訪問学習のプログラムに参加する形でプログラムの国際的展開の事前準備が行われたが、時間的な制約があった。3年目ではこの点に配慮して早めに取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
教育専門職員養成に関わる防災教育の実験的プログラムを引き続き継続して実施して、より質の高いものにしていく研究を進める。その際の課題として、第一に、授業の単位数と位置づけがあげられる。半期15回2単位の授業プログラムであったが、これで十分なのか、さらに通年4単位が必要なのかを検討する。教員養成課程のカリキュラムは近年ますます過密化してきており、防災教育が重要とはいえ、にわかに必修科目とすることは難しい。また、それを担う大学教員が圧倒的に少なく、到底準備できるよう状況にはない。ただ、すでに新養成課程のコアカリキュラムの「教育に関する社会的、制度的または経営的事項(学校と地域との連携及び学校安全への対応を含む」科目に防災も位置づき、徐々にではあるが、教員養成課程におけるカリキュラムでコアに位置づける方向性でカリキュラムが改変されることが期待される。一方、社会教育主事養成課程においては、2018年の「社会教育主事講習等規程の一部を改正する省令」により、「社会教育特講」に求められる科目として「防災・防犯と社会教育」が追加され、社会教育主事養成課程でも徐々に重要性が自覚されつつある。必修科目として、あるいは既存の選択必修科目の内容の一つとして位置づけることを検討する。 第二に、大学構内での火災の際に、職員の到着の前に学生・院生自ら初期消火に取り組むことができるように、消火栓の操作方法の確認などを行う内容を検討する。一般的に、大学生の学部生は18~22歳で、訓練すれば自身で消火栓を使って初期消火を行えないはずはない。 これに加えて、国際的展開を具体的に行うための研究交流を行う。ニュージーランドとの研究交流は、防災職員との間でも行っており、成果を出せるように取り組む。、
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Causes of Carryover |
当初の執行予定の額より、低額で購入できたため、若干残額が生じた。
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