2021 Fiscal Year Research-status Report
小中学校国語科における説明的文章作成指導に関する歴史的研究
Project/Area Number |
21K02225
|
Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
鈴木 貴史 帝京科学大学, 教職センター, 准教授 (10588809)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 作文 / 教育史 / 国語 / 小学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、明治初期の範文模倣期に着目して作文教育の状況を探った。当時の作文教科書の三つの系統のうち、先行研究で批判された「範文模倣」の教材は上級者向けといえる漢文系統の教科書であった。小学生の作文教育に対して、漢詩文を原典とする高尚な表現を避けることや、「書取」を通して基礎を語彙、表現を獲得することが重要視され、易から難へという流れが重要視されていたことを確認した。 こうした漢文系統のほかに初期の師範学校では、試験的に文法学習を兼ね備えた新しい型の作文教科書が開発された。当時開発段階にあった日本語文法学習の導入によって、範文模倣からの脱却を図っていたのである。しかしながら当時の小学生には難易度が高く、文法教育と関連付けた作文教育が根付くことは困難であった。 その一方で、新しい型の作文教科書には文法学習に加えて填字法や検誤法が採用され、従来のような範文模倣とは異なる方法が示された。これらの方法は文章を綴るためというよりは、漢字表記と仮名遣い、および文法を正しく理解することにも重点が置かれていた。それでも填字法は、例文の形式に画一的な解答を求めるのではなく、その文に当てはまる適切な語句を学習者が選択して文章を作成するという僅かながらも自由度のある教授法であった。 範文模倣期の作文教育では①文法の活用、②填字法および検誤法の導入という2つの特徴が確認された。これらは見方によっては形式主義であったといえるが、近世の手習教育のようにただ単純に範文模倣するだけではなかった。とりわけ、填字法は空白に複数の選択肢が入れられるような工夫がなされており、画一的に諳記暗誦する方法とは異なっていたことを確認した。範文模倣期の作文教育は、填字法を導入することにより学習者である児童が内容について柔軟に考えながら形式を習得させる方法が模索されていたことが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、明治初期の作文教育の状況を確認することができた。筑波大学日本語日本文学会における学会発表、さらに人文科教育学会誌『人文科教育』に投稿など、成果を公表することもできている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、明治学制期以降の作文教育を辿る予定である。具体的には今年度の続きとして教育令期における自作文の登場について探っていく予定である。 さらに、1900(明治33)年の国語科成立以降の明治後期から大正期の作文教育の状況を確認していく予定である。とりわけ、芦田恵之助に着目して前後の時代との比較検討を行っていく。
|