2021 Fiscal Year Research-status Report
現代日本の道徳観に対する仏教教育の影響の再検討―仏教の近代化と教化の視点から―
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21K02233
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小池 孝範 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (80550889)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹田 博通 東北大学, 教育学研究科, 名誉教授 (80154011)
川村 覚昭 佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (90113050) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 道徳 / 安心 / 信心 / 曹洞宗 / 浄土真宗 / 臨済宗 / 教化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、科研費研究「日本仏教教育の戦前と戦後の連続性と非連続性―宗教教育の公共性に向けて―」(17K04587)の研究成果をふまえつつ、布教・教化を含めた広義での「仏教教育」が、明治以降の近代化の中で道徳観の形成に与えてきた影響について、浄土真宗(川村)、臨済宗(笹田)、曹洞宗(小池)を中心に検討することを目的としている。 令和3年度は、道徳観を中心とした現代的課題に対する仏教教育の関わりを中心に検討した。具体的には、 川村は、現代人間学における「悪性」の問題について、親鸞の信心を手がかりに検討し、親鸞の信心が、超越的地平から世俗的理解が破られ、非連続的否定的に人間に成る実存的経験であること、また、そのことは人間と世界を実存論的に掴める「まこと(信=真実)」が分ることであることを明らかにし、その「まこと」が分る経験に浄土真宗は教育原理を求めなければならないことを主張した。 笹田は、社会不安に対する宗教教育の役割または使命の原理的闡明に取り組み、仏教教育学、とりわけ「禅」仏教の人間形成論の境位において、①不安と宗教とを関係づけうる指標、②仏教的な不安理解が包蔵する特質、さらには③不安/安心/教育を洞察する構図について検討した。また、日本人の道徳教育観の特質を、綱島梁川の思想に基づいて、教育観(人間形成観)、道徳観、宗教観および自然観との関連で多角的・重層的に考察した。 小池は、社会が大きく変化し、不安の時代でもあった明治期に社会を覆った「通俗道徳」に対し、仏教、とくに曹洞宗がどう対峙し、どう応えていったのかについて検討することを通して、現代における仏教教育を通じた「安心」への方途を探った。また、明治前期の地方における道徳教育の基礎となる道徳観について、秋田県で使用された教科書から検討した。 研究については、オンラインの研究会(5回)で検討し、研究の共有を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍のため、実践記録、機関誌等の調査については十分に実施することができなかったが、これまでの調査資料等を再検討すること等によって、それ以外については、概ね当初の計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
布教・教化を含めた広義での「仏教教育」が、明治以降の近代化の中で道徳観の形成に与えてきた影響について検討するという所期の目的の実現に向け、引き続き小池は曹洞宗を中心に、笹田は臨済宗を中心に研究を進める。 川村は退職に伴い研究分担者の資格を喪失したものの、引き続き研究協力者として研究に協力してもらうことで、所期の計画どおり、浄土真宗を中心とした研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により出張が制限され、また、学会等もオンラインでの開催となったため、旅費等の支出がなかったため、次年度使用額が生じた。 感染状況にもよるが、当初予定していた実地調査、シンポジウムの開催を実施する予定である。
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