2021 Fiscal Year Research-status Report
前世紀転換期イギリスのエゴ・ドキュメント(書簡)にみる虐待児・極貧児の教育経験
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21K02238
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三時 眞貴子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90335711)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 浮浪児 / 虐待児 / エゴ・ドキュメント / 20世紀 / 19世紀 / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、前世紀転換期に児童保護運動が世界的に展開される中、イギリスにおいてネグレクト等の虐待や極貧を理由に、行政命令で親から引き離され、数年間にわたって寄宿制のインダストリアル・スクールに収容された子どもたちが、学校における教育経験をどのように受け止めていたのかを、彼らが退校後に学校に近況を書き送った書簡を手がかりに明らかにしようとするものである。 今年度は前年度に引き続き、19世紀末から20世紀初頭における各国の児童虐待防止協会の活動に関する先行研究及び一次史料を国内外で収集、整理するとともに、イギリスのインダストリアル・スクールを含む教育支援の全国組織、Reformatory and Refuge Unionの雑誌Seeking and Savingと、同組織の年一回の全国大会の報告書を分析することと、1879年から1964年の間にマンチェスタのカトリック系インダストリアル・スクール、セント・ジョセフ・スクール(男子校)宛に送られた書簡の内、個人情報の点から利用可能な1920年までの書簡およそ200通を分析し、書簡の差出人とその家族の調査をすることであった。 渡英ができなかったため、Refuge Unionの雑誌Seeking and Savingの収集ができなかったが、年一回の全国大会の報告書に関して、学校関係者が子どもたちの将来にどのような期待をしていたのかについて男女別に分析した。また、書簡については、イギリスで差出人やその家族について、教区簿と住民データーベースをもとに調査することはできなかったが、200通を整理分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画ではイギリスに資料調査に行く予定であったが、コロナの影響で渡英することが叶わなかった。そのためRefuge Unionの雑誌Seeking and Savingが収集できず、その分析が叶わなかった。また、イギリスで出身者やその家族について、教区簿と住民データーベースをもとに調査する予定であったが、残念ながらこれも叶わなかった。 そのため、これらの作業は、次年度、渡英が可能になったら行う予定とし、補助金も繰り越した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの状況次第ではあるが、今後、渡英が可能になった場合には、Refuge Unionの雑誌Seeking and Savingがロンドンの大英図書館に所蔵されているので、これを収集する予定である。また、差出人の整理が終わったので、本人やその家族について、イギリスで教区簿と住民データーベースをもとに調査する予定である。 また、名前や住所、出身地や生年月日、洗礼を受けた教会の記録等が記されている入学記録から差出人の情報を得るとともに、マンチェスタ学務委員会が行ったセント・ジョセフ・スクールの年次調査報告書と学務委員会議事録、国勢調査やマンチェスタの地方紙Manchester Guardianに、当該の子どもの記録がないかを確かめ、できるだけ幅広く当該の子どもの情報を集める。 書簡を読んで、子どもたちが自らの教育経験を、書簡を出した当時の文脈でどのように解釈していたのかについて、分析する作業に着手する。
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Causes of Carryover |
予定では渡英して資料収集とデータベース調査をする予定であったが、コロナの関係でそれが叶わなかったため、その作業を次年度にするために繰り越した。
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Research Products
(4 results)