2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K02245
|
Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
片瀬 一男 東北学院大学, 教養学部, 教授 (30161061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天童 睦子 宮城学院女子大学, 一般教育部, 教授 (50367744)
相澤 出 岩手保健医療大学, 看護学部, 准教授 (40712229)
大迫 章史 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60382686)
石川 由香里 活水女子大学, 健康生活学部, 教授 (80280270)
土田 陽子 帝塚山学院大学, 人間科学部, 教授 (30756440)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ミッション教育 / 女子教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は以下の実績をあげた。 1)宮城学院の同窓生調査 同じく調査票調査(ただし面接調査)を行った津田塾大学の研究を参考にした。調査依頼者は、同窓会との打ち合わせのもと、宮城学院女子大学、同短期大学を卒業した40代から60代までの卒業生のほぼ中央の2学年を各年代を代表するコーホートとみなし、いずれの学年も同窓会名簿で住所判明した全数3,297名(母集団サイズ)とした。 調査方法は対象者の自宅に調査票を郵送し、返信用封筒にて回収するという郵送調査法で、調査期間は2021年7月16日~8月31日であった。郵送調査は回収率が低くなる、記入者の本人確認ができないなどといったデメリットはあるものの、今回のようなコロナ禍のもとで外出・対面が妨げられるような状況ではやむを得ない選択であり、また仙台市外あるいは宮城県外に居住する卒業生にも偏りなくアクセスするうえでは有効な方法である。幸い有効回収数は1,148(有効回収率34.8%)と回収状況は他の一般的な社会調査の郵送調査に比べても良好だった。その成果は(片瀬・天童 2022)にまとめた。 2)函館女学校の資料取集 函館女学校の資料については、函館女子中学・高校を8月20日からと、1月24日からと2回に分けて訪問し、同校の昭和初期の同窓会報ならびに戦時中の援農の記録『いくさの陰で』の書画カメラによる撮影をおこなった。また同校の卒業生へのインタビューをはじめ、150周年史編集委員の教員とも情報交換を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はまず、年来の課題となっていた宮城学院の同窓生調査ができたことが最大の成果であった。これまで同校同窓生については、生活史のインタビュー調査、同窓会報の内容分析にとどまっていた。そのため、一部の「成功者」の研究にとどまっていたが、今回は代表的な3つのコーホートとはいえ、同窓生一般の意識や行動が把握できた。 しかし、歴史的研究でも資料収集や現地調査を伴う場合、コロナ禍の影響を免れず、その合間を縫っての研究となった。函館遺愛女学校の調査は函館がまんえん防止等重点措置となっていない時期に行ったが、もう1つの調査予定校の長崎活水女学校は3月まで学外者の受け入れがされておらず、結局、現地調査は断念した。 また両校ともメソジスト系のミッション・スクールだったが、同派の資料をもっとも有している青山学院資料センターもまた学外者の利用を認めていないのも少なからぬ障害となった。ただ同センターとはメールのやりとりで、Annual Report of the Woman’s Foreign Missionary Society of the Methodist Episcopal ChurchやAnnual report of woman's foreign missionary societyといった同派の年次記録がインターネットを通じてアメリカのデータアーカイブからダウンロードできることを教示いただいたことが大きかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
目下、残された課題は、まず資料収集が残されている活水女学校(活水女子大学)の資料室を訪問し、その資料の検分・撮影することである。これは今年度、前半に果たしたい。 そのうえで、今回の研究の目的を、資料をもとに検討した結果、研究対象とする3校(函館遺愛女学校・宮城女学校・長崎活水女学校、いずれも名称は旧制)と変わらないものの、対象とする時期を昭和前期から敗戦期までにすることとなった。 これまでの本研究は、主に明治30年代を対象にして来た。明治30年代というと、日清日露戦間期で最初のナショナリズムの高揚を背景に高等女学校令、私立学校令、文部訓令12号が出されたミッション女子教育の第一の危機である。これに次ぐ第二の危機は、言うまでもなく第4次国定教科書による神社礼拝の推奨から敗戦までの時期かと考えられる。またあえて「地方」に注目するのは、その地方の歴史的・政治的要因によって、教育社会学の用語でいえば中央の指令などが脱連結される―つまり、指令に規定された公式構造とは別の教育活動が行われる事例が観察できるからである。 当面は各校の昭和初期から戦時期の学校資料、同窓会資料等の蒐集・解読に当たるが、とりあえず分析できるデータとしては、宮城学院女子大学の大平聡教授が2000年頃、同校の同窓生を対象に行った戦時体験(特に多賀城・横須賀の海軍工廠への動員体験)の聴き取り記録がある。この記録は同大学の『資料室年報』に13回にわたって連載されており、質・量ともに十分分析に足るものである。2000年と言えば、戦後55年であり、戦時期の女学生も70歳前後ということで、その記憶・証言は信頼できると推察される。 これまで学生の戦時体験と言えば、学徒出陣に代表される男子の記録の研究が中心で、女子については沖縄の「ひめゆり部隊」といった例外を除き、管見の限りでは見当たらず、本研究はその間隙を埋めるものとなる。
|
Causes of Carryover |
この年度は、函館遺愛学院に加えて長崎活水学院および青山学院資料センターに行き、資料収集をする予定でいた。このうち先述のように函館遺愛は夏・冬計2回の訪問を果たせたが、コロナ禍のため、長崎活水は学外者の入構を認めておらず、また青山学院資料センターも学外者の利用は不可となっていた。そのため資料収集旅費に残額が出ることになった。 これらの残額は2022年度の旅費に充てる。幸い「まん延防止特別措置」の撤廃に伴い、長崎活水は資料室への入室が認められるようになったので、同学院長並びに資料室とも交渉を行い、まずは2022年度8月に機材持参で資料撮影に行くことになっている。
|
Research Products
(4 results)
-
-
-
-
[Book] 若者の性の現在地2022
Author(s)
林雄亮・石川由香里・加藤秀一編著
Total Pages
256
Publisher
勁草書房
ISBN
978-4-326-60348-0