2022 Fiscal Year Research-status Report
脳波測定を通じたシュタイナー教育の実践的有効性の検討
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21K02249
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井藤 元 東京理科大学, 教育支援機構, 教授 (20616263)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 恭平 東京理科大学, 理学部第一部物理学科, 助教 (30855622)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | シュタイナー教育 / 脳波測定 / 音楽療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではシュタイナー教育の意義を脳波測定によって明らかにすべく、これまでにシュタイナー教育独自の実践であるフォルメン線描、ぬらし絵、オイリュトミー、手仕事、楽器演奏中にリアルタイムで脳波測定を行うことにより、実践者の状態(集中、安静、興奮、論理的思考)を分析する中で、シュタイナー教育の実践の分析を試みてきた。 2022年度は、とりわけアントロポゾフィー音楽療法(Anthroposophical Music Therapy:以下AMTと略記)に携わる音楽療法士の脳波・呼吸・体温変化の分析を通じて、ATM療法楽器が演奏者に及ぼす作用の内実を明らかにした。A M Tは現在、世界各地のシュタイナー学校、アントロポゾフィー医療を実践する病院、芸術療法院、高齢者施設、治療教育施設、福祉施設などで実践されているが、ATMで用いられる独自の楽器が演奏者にもたらす作用については、療法士の経験則に基づいて把握されてきたものの、これまでに科学的アプローチに基づく分析は行われてこなかった。そこで、2022年度は、日本におけるAMTの第一人者であり、卓越した技能と知識を兼ね備えている療法士を被験者とし、ATM療法楽器が演奏者にいかに作用しているか分析を試みた。 また、AMTで用いられる特徴的な金属製打楽器(タムタム、ゴング、シュテーベ)の演奏時における、聴き手(健常な成人)の脳波を測定することにより、AMT楽器が聴き手に及ぼす作用も分析した。さらに、一般的な心地よい音楽をスピーカーで聴いた際の脳波との比較をすることで、AMT楽器が聴き手に及ぼす作用の特徴を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進んでおり、その成果は3本の査読論文(うち1本は近刊)および1回の学会発表のうちに結実した。 1本目の論文は「シュタイナー教育において楽器演奏が演奏者と聴き手にもたらす効果ー脳波測定を通じた分析」と題し、『ホリスティック教育/ケア研究』第25号に掲載された。2本目は「アントロポゾフィー音楽療法における楽器演奏時の聴き手の脳波分析」と題し、『東京理科大学 教職教育研究』(第8号)に掲載された。また、3本目の論文は「アントロポゾフィー音楽療士の脳波・呼吸・体温変化の分析」と題し、『ホリスティック教育/ケア研究』第26号への掲載が決定している。また、「シュタイナー音楽療法における聴き手の脳波測定」と題し、日本ホリスティック教育/ケア学会にて研究発表を行った。 本研究を通じて、アントロポゾフィー音楽療法士が日々の実践において直観的に感じ取っていることの裏付けを取ることができたように思われる。たとえば、アントロポゾフィー音楽療法士は、楽器の材質(硬い・柔らかい)によって、演奏者や聴き手に与える印象と作用(高揚・鎮静)が異なることを経験的に把握しているが、本研究を通じて、同じ楽器でも青銅は覆うような温かさ、鉄は演奏者や聴き手の意識を目覚めさせる要素があることが数値データでも示された。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究を通じて、今後の課題も明らかになった。2023年度もシュタイナーの音楽療法(A M T)の検討を中心に据え研究を進めてゆく。 とりわけ、AMTで用いられる楽器と一般的な演奏用の楽器の詳細な音質分析を行い、それらの違いを比較すること、あるいは被験者-演奏者の脳波測定を同時に行い、相互の関係を検討することも重要な課題となる。また、被験者の数を増やしてゆくことも必須である。さらに、スピーカーなどのデジタル機器を通じて、音楽療法の実践が可能となるのか、実験を試みたい。以上のテーマを2023年度の課題として見据えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、旅費の使用額が想定を下回ったため、次年度使用額が生じた。2023年度は新型コロナウィルスの影響も落ち着いてきたため、当初の計画通りに旅費などを使用し研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)