2022 Fiscal Year Research-status Report
過疎農山村の持続可能な地域づくりにおける後継者の〈生〉と学習
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21K02257
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松本 大 東北大学, 教育学研究科, 准教授 (50550175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安藤 耕己 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (30375448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域づくり / 社会教育 / 成人教育 / ナラティヴ学習 / バイオグラフィー / 地元学 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に社会教育研究・成人教育研究をもとに、地域社会のバイオグラフィーを学ぶことが住民のエージェンシーの達成に結びつくことを理論的に提起したが、その実践は個人が単独もしくは孤立して形成するものではなく他者との相互関係のもので共同的に構築するものである。今年度分析の対象としたのはそうした地域づくりや社会教育の学習をとりまく共同性である。さらに、共同的なナラティヴ学習に介在する矛盾それ自体に焦点をあて、地域づくりにおける成人のナラティヴ学習について理論的な検討を重ねた。具体的には、第一に、地域社会には複数の共同性が存在し重層的な矛盾が存在していること、つまり地域づくりにおけるナラティヴ学習は重層的な共同性と矛盾のなかで構造化されていることを明らかにした。それゆえ第二に、地域づくりや社会教育におけるナラティヴ学習を、弁証法的な学習として提起した。第三に、複数の共同性や物語から弁証法的に学習するプロセス、具体的には地域社会のバイオグラフィーを他者と共有し試行錯誤しながら「研究」するという地元学的実践は、不安定で予測不可能であること、しかしそれでいて漸進的な相互作用であるという点が重要であることを指摘した。第四に、地域づくりや社会教育にとって共同性そのものが重要であるのではなく、その共同性がオルタナティヴで未完のプロセスあること、そしてそれを主体的・共同的に生み出すことに意味があるのであり、ここに社会教育やノンフォーマル教育の特徴があるとした。 以上の研究については、複数の国際学術ウェビナーにて口頭発表した(Transnational Webinar on Adult and Continuing Education(2022年11月、インドネシア教育大学)など)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度から継続して理論的研究を実施し国際的な場で発表してきているものの、インタビュー調査については予備調査の段階でとどまっており、当初の予定と比較すると十分に実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
文献レビューによる理論的な整理については一定の成果を出してきており、残るはインタビュー調査に基づく実証研究である。これまでに東北地方を中心とした事例についての情報収集や予備調査は済ませてきており、新型コロナウイルスを取りまく社会状況も鑑みながら、実証的な研究を積み重ねたい。
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