2021 Fiscal Year Research-status Report
体験教育学にもとづく「社会への開かれ」の推進 ―新科目「公共」の射程として―
Project/Area Number |
21K02262
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
伊藤 敏子 三重大学, 教育学部, 教授 (20269129)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 社会への開かれ / ドイツ / 新教育運動 / 体験教育学 / 公共 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、新教育運動の一環として「一市民として責任を担いうる次世代を育成すること」を目指して展開された体験教育学の構想と実践を検証することで、「選挙権を持つ市民として社会の運営を担える人材を育成すること」を目指して2022年4月に高等学校で導入される新科目「公共」の学びをより実効性あるものにする取り組みを考察することにある。 2021年度には、新教育運動の枠組みにおいて体験教育を推進したザーレム城校およびクルト・ハーン資料館で第一次資料の収集を行い、ハーンの著作およびザーレム城校の校誌を中心として「社会」「公共」「責任感」に関連する概念について、量的・質的分析を進めることを予定していた。しかしこの予定についてはコロナ禍で移動が制限されたことで実現しなかった。 2020年にザーレム城校が創立100周年を迎えたことを機としドイツでザーレム城校の教育理論・教育実践を主題とする新たな書籍・論文の公刊が相次ぐという現象が生じていた。このことを受け、2021年度についてはザーレム城校創立100周年を機として新たに公刊された書籍・論文を対象として質的分析を試みる方向へと急遽の軌道修正を行ったうえで本研究を進めることにした。 2021年度における分析対象として急遽浮上した「ザーレム城校創立100周年」関連文献については、間接的および限定的な記述に傾いており、成果は限定的なものにとどまる。しかしながら、「社会への開かれ」と「公共の意識化」という課題への取り組みの在り方を体験教育学の枠組みを土台としつつ新科目「公共」を射程として明示することに向けて、「ザーレム城校100年」を俯瞰するかたちでの考察の一環として位置づけることは可能である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ザーレム城校およびクルト・ハーン資料館で第一次資料の収集を行い、量的・質的分析を進めることを予定していたが、コロナ禍で移動が制限されたことを受け実現しなかった。2021年度についてはザーレム城校創立100周年を機として新たに公刊された書籍・論文を分析対象へと変更することで質的分析を行い、一定の成果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に予定していた「ザーレム城校およびクルト・ハーン資料館における第一次資料の収集」については、間接的および限定的な記述を排除して「社会」「公共」「責任感」に関連する概念の分析を進めるうえで本研究の柱となる。コロナ禍による移動制限が緩和された時点で実施したい。 一方、「公共」の教科書が入手可能となった時点で、「公共」の教科書分析を前倒しして実施することも念頭に進めていきたい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の移動制限を受けて予定していた資料収集のための出張ができなかったため。
|