2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K02266
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Research Institution | Tsuru University |
Principal Investigator |
木下 慎 都留文科大学, 文学部, 講師 (10803257)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 共同体 / デモクラシー / 論争問題 / 哲学対話 / 共存在 / 主体 / 自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、教育における共同体の可能性を再検討するため、民主主義と学校を哲学的テーマとしたデューイの教育思想と、それを21世紀の現代社会において発展的に継承したノディングスの教育思想について考察を行なった。ノディングスは社会的な対立を招いている様々な論争問題(人種差別、ジェンダー差別、宗教対立、経済格差など)について学校で対話することを提案しているが、それは知性的な探究共同体の構築を目指したデューイの教育思想に連なっている。本年度は、論争問題を介した対話的共同体の実現可能性について、子どものための哲学対話(P4C)、国際バカロレアの「知の理論」(TOK)、「考え議論する道徳」における具体的な授業実践と照らし合わせながら検討を加えた。答えが一つに定まりづらい問題に対して、答えの押し付けや教え込みを避けつつ、過激な懐疑主義や価値の相対主義に陥ることも避けるためには、知識や価値の正当性や知的探究における倫理的態度について哲学的検討を行う必要性が見えてきた。その際、最近の徳認識論の議論は一つの参照点になると思われる。とはいえ、対話が有意義に成り立つための認識論的・倫理学的・コミュニケーション論的な前提条件を多角的に探ることは教育的な意味において極めて重要ではあるものの、他者や自己と「共に在る」という存在の事実性はそれらの条件に還元されない要素を含んでいる。ナンシーの哲学は、後者の点を明らかにするための言葉や概念を練り上げる試みであり、その教育学的意義は、前者の議論との対比においてより明確にできるだろうという展望が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響で海外出張が困難になったため。ならびに本務校の業務量が予想より大きかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
国内外から取り寄せた文献の読解を中心に進めていく。前年度と本年度の研究によって、教育実践に関する具体的な課題が見えてきたので、今後はナンシーの哲学に関する研究成果を教育学の議論に接続していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染拡大および研究対象者の訃報により海外出張を取りやめ、国内での研究活動が中心となったため、次年度使用に当てる繰越金が生じた。次年度は資料収集・整理と研究成果の報告に割り当てる金額を拡充するなどの対応を行いたい。
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Research Products
(1 results)