敗戦直後の演劇活動 ―その実態と教育的性格の解明―

2022 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K02272
• Research Institution: Yokohama Soei University
• Principal Investigator: 小川 史 横浜創英大学, こども教育学部, 教授 (60442159)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2024-03-31
• Keywords: 演劇活動 / 社会教育史 / 文化活動 / 青年団

Outline of Annual Research Achievements

敗戦直後の演劇活動について、資料が比較的多く残されている山形県の調査を行った。主として山形県立図書館に所蔵されている郷土資料をもとに検討を進めたが、その主なものとしては、雑誌『山形演劇』や『銅鑼』山形県に疎開していた大山功関連の文書、敗戦後山形県の文化活動を推進した中心的人物の一人である須藤克三の著作が挙げられる。特に『山形演劇』『銅鑼』からは、敗戦後きわめて早い時期に大山功を中心として始められた演劇活動の発足やその後の上演までの経緯が当事者による記録として残されており、貴重である。これらの文書を通して、当時山形県で行われた活動の具体的な様子がかなり明らかになった。また、山形県以外では、長野県、山口県、九州地域の状況について資料を収集した。
同時に、1946年から1950年代中盤までの間に数多く発行された脚本集や演劇の入門書を収集し、目録化する作業を進めた。全国各地の青年団や労働組合で演劇の活動が活発になった際、求められたのは上演可能なよい脚本、演劇の方法、指導者であったが、当時発行された脚本集や入門書はその要望に応えるものであった。そうした文書を作成した人の多くは劇作家や演出家であったが、中には地域のコンクールで入賞した脚本集なども存在する。それらの内容から、当時の演劇活動が内容的にどのような性格を持っていたのかが理解できるはずである。この点については、2023年度に更に検討を進める予定である。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

敗戦直後の演劇活動について、具体的な地域の文脈をもとにその状況を明らかにしつつある。本研究が目指す、複数の地域の活動について具体的な文脈を踏まえた総合的な検討に向けて、前進している。特に、山形県、長野県に加え、九州地域にまで視野を広げ、市町村史などの記述から活動の実態を検討できたことで、当時の様子がかなり明確になった。
また、当時発行されていた出版物から、各地域の活動の様子だけでなく、脚本、コンクールの有無、作家・演出家による批評などを含めて、演劇活動に向けられていた眼差しや活動の方向性なども知ることができた。特に脚本集と入門書の目録の作成が進んだことについて研究の前進を確認できる。

Strategy for Future Research Activity

引き続き、各地域の演劇活動について調査を進める。これまで検討した山形県・長野県に加え、九州・中国地域の状況を把握する。特に山形県の活動については活動に関わった人物の記録や当地で発行されていた雑誌などの検討を踏まえ、敗戦直後の山形の演劇活動として報告をまとめたい。
また、当時の資料の収集に努め、目録の完成を目指す。目録は、出版物のタイトルと著者・出版者の他、内容の目次なども含めたものにする予定である。その作業を通して、今後の素人演劇研究の基本的な資料とすることを目指している。

Causes of Carryover

コロナ禍で出張が制限されたため、旅費の使用が少なくなった。当該年度に出張できなかった分は、次年度に実施したい。