2021 Fiscal Year Research-status Report
ニーチェ思想と日本の教育学との関係可能性に関する受容史的検討
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21K02275
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
松原 岳行 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10412462)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ニーチェ / 教育学説史 / 篠原助市 / 小西重直 / 長田新 / 受容史 / 生の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ニーチェ思想の教育学的意義を検討するための基礎研究として、明治期から戦後に至るまでの近代日本の教育学形成期におけるニーチェ受容史を解明し、非教育学的なニーチェの思想と教育学との関係可能性を検討するための視座の獲得を目指している。 研究1年目となる令和3年度は、これまで予備的に研究を重ねてきた長田新(1887-1961)、中島半次郎(1871-1926)、篠原助市(1876-1957)らによるニーチェ受容に関する研究成果を踏まえ、新たに、田制佐重(1886-1954)と小西重直(1875-1948)のケースに着目し、それぞれの教育学におけるニーチェ受容とその特質を解明した。その結果、わが国で先駆的に「教育者としてのニーチェ」という表記を用いた田制佐重は一話完結型のニーチェ論を展開した点において、また1917年の時点で「ニイツエの学制論」と題する論文を発表した小西重直はニーチェの初期思想を限定的に受容する研究スタイルを築き上げた点において、その後の教育学におけるニーチェ受容史のトポスとして位置づけられることを明らかにした。 なお、この成果は「田制佐重の教育学におけるニーチェ受容とその特質」(『九州産業大学国際文化学部紀要』第78号、2021年11月、27-55頁)および「小西重直の教育学におけるニーチェ受容とその特質」(『九州産業大学国際文化学部紀要』第79号、2022年3月、1-37頁)において公表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新品のデスクトップ型パソコンとレーザープリンタを購入することができたため、国会図書館デジタルコレクションサイトにおいて近代日本の教育学関連文献を大量に閲覧・印刷し、効率的に精読及び分析作業を行うことができた。田制佐重と小西重直の2名に関してそれぞれ論文を発表することができたのは、1年目の進捗状況としては十分に評価できると思われる。 その一方で、新型コロナウイルス感染状況等の影響もあって、思うように国会図書館本館への出張ができず、館内閲覧のみ許可されている一部の資料はいまだ確認できていない。今後は、古書店サイトから資料の現物を入手したり、図書館の相互貸借サービス等を積極的に利用したりするなどして、研究が遅滞しないよう留意したい。
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Strategy for Future Research Activity |
勤務大学の旅費規程に基づき東京へ数回出張し、国会図書館や古書店において資料を収集するとともに、精読・分析作業を行う。具体的には、近代日本の教育学者らによるニーチェへの言及とその意味を網羅的に検討するとともに、教育学関係の事辞典類におけるニーチェ思想の位置価値を時系列的に分析し、近代日本の教育学がニーチェ思想とどう向き合ったのかの実態を明らかにしたい。
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