2021 Fiscal Year Research-status Report
海外展開する高専教育モデルの実装化に関する研究―タイの実装事例を中心に―
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21K02293
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Research Institution | Hiroshima National College of Maritime Technology |
Principal Investigator |
下田 旭美 広島商船高等専門学校, その他部局等, 講師 (80812784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 高専 / 比較教育 / 技術者教育 / タイ / 教育借用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、タイに日本から移植された5年間の高専教育モデルの実装の実態を把握し、学術的視点「教育借用」論と経験的視点「国内高専の創設当初の課題と取り組み」から、高専教育モデルのタイでの実装化の課題と改善策を明らかにすることである。 本研究は、若手研究(2018~2020年度)「高専教育モデルの海外展開基盤の現状と展開実態に関する研究―タイにおける展開事例―」からの継続研究である。具体的には、若手研究では、タイの既存の職業教育制度や高専教育モデルの導入経緯を把握するとともに、第1期生の入学試験の実施前から第3期生の入学まで継続して現地調査を行い、本研究計画の1年目である2021年度には、第4期生を対象にした調査を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で、本年度はタイ渡航を断念せざるえない状況となった。現地の研究協力者の協力を受け、質問表などを作成し情報収集を試みたが、休校、オンライン授業、訪問者の受入れ不可など、代替案の実施も困難であった。そこで、本研究課題の目的に照らして、海外移植の際に先鋭化する高専教育のアイデンティティを探るべく、海外の職業教育機関と高専を比較分析し「海外から見た高専の特徴―東南アジア諸国との予備的比較分析―」『広島商船高等専門学校紀要』第44号所収としてまとめた。また、教育借用に関する先行研究の検討と教育モデル受容のプロセスの中での摩擦や衝突についての理論枠組み、分析項目の設定について、第11回世界教育学会で発表した(2021年7月)。さらに、日本高専学会でのこれまでの高専研究について「『日本高専学会誌』の25年:振り返りと展望」としてまとめ、日本高専学会第27回年会講演で発表した(2021年9月)。発表内容については、発表会場でのコメントや助言を含め論文にまとめ、日本高専学会へ投稿し、採択された(2022年7月に掲載予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、当該年度8-9月に予定していたタイでの現地調査は断念せざるを得ず、また12月に予定していた第14回国際タイ学会(ICTS:International Conference on Thai Studies)(京都)での発表は延期となった。第14回国際タイ学会で発表予定であった高専教育モデルを導入しているテクニカルカレッジ2校の最新の基礎情報については、本年度4月にオンラインでの開催となったため、各校、関係組織などのウェブサイトを通して情報収集を継続し、タイ高専の現状把握を進め分析・考察を行った。現地調査についても、上述の通り代替案を検討したが、実施が困難だったため、最新文献、関係組織(教育省や教育評議会事務局)などのウェブサイトから情報を収集している。 現地調査や学会発表が延期となったため、本研究課題の目的に照らして、海外移植の際に先鋭化する高専教育のアイデンティティを探るべく、高専教育モデルの制度研究に着手した。同研究は、海外に展開を進めている高専教育モデルをカンボジア、タイ、ベトナムの職業教育制度と比較し、海外から見た高専の特徴を解明することを目的にし、「海外から見た高専の特徴―東南アジア諸国との予備的比較分析―」としてまとめた。2022年度には、日本と同様の単線型教育を有する国々の職業教育制度と高専教育制度の比較分析を行い、高専教育制度の特質の解明を継続する。さらに、日本高専学会におけるこれまでの高専研究について「『日本高専学会誌』の25年:振り返りと展望」としてまとめ、日本高専学会第27回年会講演で発表した(2021年9月)。発表内容については、発表会場でのコメントや助言を含め論文にまとめ、日本高専学会へ投稿し、採択された(2022年7月に掲載予定)。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、タイ高専教育モデルの導入の5年目にあたる。昨年度把握しきれなかったタイ高専の4年生と5年生の実態(カリキュラム、教員の準備状況、卒業研究、卒業後の進路の検討など)把握を可能な限り進める。2022年度は、新型コロナウイルスの影響が減少気味ではあるが、現地調査に必要な出入国に関する手続きの変更、追加などが頻繁に起こっている。そのため、現地調査については、現地研究協力者と相談し、状況を見極めながら、手続きに関する情報もこまめに更新し調査の実施可能性を高めていきたい。と同時に、高専教育モデルに関する調査研究、成果発表を進める。具体的には、2021年度にまとめた「海外から見た高専の特徴―東南アジア諸国との予備的比較分析―」の東南アジア地域とは異なり、日本と同様の単線型教育制度を有する国々との比較分析を行い、2021年度の比較考察を含め、より広い視座からまとめていきたい。2021年度には、『高専学会誌』全100巻(1996~2020年刊行)の内容分析を行い、これまでの高専研究の傾向や、分析から見えてくる高専の特徴、今後の在り方などを、「『日本高専学会誌』の25年:振り返りと展望」としてまとめ、日本高専学会第27回年会講演で発表した(2021年9月)。発表内容については、発表会場でのコメントや助言を含め論文にまとめ、日本高専学会へ投稿し、採択された(2022年7月に掲載予定)。今年度は、同学会誌(100冊)より抽出した高専研究論文の質的分析を行い、日本のこれまでの高専研究から導き出される高専の特徴についてまとめ、9月に実施される高専学会での口頭発表を計画している。発表後は、速やかに同学会誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、当初予定していたタイ現地調査、国際学会での研究発表が延期となった。そのため、高専教育制度の海外比較、高専研究についての文献研究を進めた。これに伴い文献研究に必要となる文献(和洋書籍、和洋学術誌)や、ウェブサイトでの情報収集に必要な物品の購入に予算を執行したが、結果的には次年度使用額が生じることとなった。
次年度使用額については、新型コロナウイルスの感染の収束後、国際学会参加及び現地調査の実施予算として組み込み適切に使用する予定である。この他、研究課題関連図書費、質問紙調査の実施費、調査対象国からの研究課題関連資料の取り寄せにかかる費用、国際学術誌への投稿論文の英文校閲費として使用することを計画している。
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Research Products
(6 results)