2022 Fiscal Year Research-status Report
The Philippines as a Center for Catholic Clerical Formation in Asia: A Study on Religious Mobilities for Formation
Project/Area Number |
21K02302
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
市川 誠 立教大学, 文学部, 教授 (60308088)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | フィリピン / 宗教者養成 / 人の移動 / コロナ禍の教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
養成を目的としたフィリピンへの周辺アジア諸国からの聖職者の移動の動態を究明するため、聖職者を受け入れる語学学校や神学校に注目してきた。今年度は、フィリピンでの COVID-19 のパンデミックならびにその抑制策でこれらの機関がどのような影響をうけ、現在どのような状態にあるのか調査した。あわせて背景として、これらの機関に直接影響をおよぼしたとみられる公教育に関わるパンデミック抑制策を調査した。後者はインターネット上の政府当局や民間メディアの資料を参照した。前者は現地調査を行った。 後者では、他国との比較で、フィリピンで対面授業の中断が長期間であったことが明らかになった。基礎教育と高等教育とで展開が異なったが、両者とも2020年初めに全国で休校となった。その後オンラインやモジュール(自習教材の配付)、放送教育が対面授業にかえて長く行われ、フィリピンは「世界で対面授業を再開していない5ヶ国の一つ」(UNICEF,2021)と言われた。対面授業再開は、まず高等教育で2021年3月、基礎教育では11月であった。高等教育では現在、すべて対面授業か、オンライン等との混合方式のみとされ、対面授業のないコースは認められなくなった。なお、本年1月の政府広報システム改組で、上記に関する資料の多くが閲覧不可となっており、副次的成果であるが、調査結果は史料的価値のあるものとなった。 前者では聖職者を受け入れる機関のうち、語学学校の一つが2022年7月に閉鎖となっていた一方、パンデミック以前に調査を行った神学校4校は、生徒減などの影響を受けつつも存続し運営を継続していた。4校中2校を訪問し調査を行ったが、神学校は高等教育に属しており、2020年~2022年の授業方法は、上記の高等教育でのパンデミック抑制策に沿ったものであった。1校では2021年度の入学者がパンデミック前の半分以下まで減少していた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2022年度はCOVID-19パンデミックが完全に収束していないなか、現地調査を当初の予定ほど行うことができなかった。年度の前半は、インターネットを通じた資料収集やコミュニケーションによってこうした制約を部分的に補いつつ研究を進めた。 3年弱ぶりに行った現地調査では、 注目していた語学学校が閉校していた一方、別な語学学校がこれに置き換わる役割を果たしつつあることが分かり、調査方針の再検討が必要となっている。神学校においても、複数校で異動によりコンタクト・パーソンやインフォーマントが不在となったことで調査の前提条件となるラポールが失われており、2校で予定していた調査を行うことができなかった。調査した学校では、運営方法・生徒数などに引き続きパンデミック抑制策の影響が残っているのがみられ、本研究が対象とするより長期のトレンドがまだみえにくい段階であった。また修道会の調査は、短めの渡航期間としたこともあり、着手できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
フィリピンに渡航しての現地調査の可否とその期間によって、今後のスケジュールが左右される。必ずしもワクチンの普及や追加が十分でないことから、フィリピンでのパンデミックとそれへの抑制策の展開は予断を許さないが、本年4月末時点で研究者の2022年度渡航時よりさらに入国制限は緩和されており、2023年8月からの渡航調査実施が可能と想定している。 また語学学校・神学校とも、2023年度以降、パンデミック抑制策の影響解消がさらに進み、本研究のねらいとするより長期のトレンドの究明が可能となると期待している。ただし、複数の学校ではコンタクト・パーソンの確保から着手することとなり、ラポールを形成して調査が実施できるまで時間がかかると予想される。2023年度は修道会の調査の開始も目指すが、同様にラポールの形成がまず最初の作業となる。方策としては、すでに調査している神学校のスタッフを通じ、それらの学校にアプローチすることが有効であると考えている。 なお神学校の調査では、文献収集(学校の発行する紀要など)が、調査に制約がある場合であっても比較的容易と考えられ、優先的に行いたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
COVID-19パンデミックが内外で完全に収束しなかったため、フィリピンでの現地調査の期間が当初の予定より短く、支出の中心である旅費が小さくなった。とくに年度の前半は、支出をともなわないインターネットを通じた資料収集が研究の中心であった。 次年度使用の額と翌年度分の請求助成金とをあわせて、これまで不十分であった現地調査を2023年度以降に行うことにともなう旅費や現地での協力者への謝礼品などで使用することを予定している。
|