2021 Fiscal Year Research-status Report
開発途上国における日本語教師の授業文化に関する研究:授業の「型」に着目して
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21K02321
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
西條 結人 四国大学, 全学共通教育センター, 助教 (80825977)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 授業文化 / 開発途上国 / 日本語非母語話者教師 / 高等教育機関 / キルギス / 海外日本語教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021(R3)年度は、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、キルギスへの渡航制限だけではなく、日本やキルギスの教育機関での授業形態が遠隔授業となっていることから、予定していた対面授業での授業動画データの収集が難しい状況にあった。そこで、2021(R3)年度については、調査方法の再検討を行うとともに、より詳細に当該研究における課題を明らかにするための基礎的研究を行った。当該年度の研究実績及び進捗状況は以下の3点にまとめられる。 (1)キルギスの高等教育機関の中で、学部・大学院で日本語主専攻課程を有し、日本語教師も多く輩出しているビシケク国立大学を事例として取り上げ、非母語話者教師養成の観点から日本語専攻課程カリキュラムを分析した。キルギスの研究大会(オンライン)で口頭発表を行い、成果をまとめ、論文として公表した。 ・西條結人(2021)「キルギスの高等教育機関における日本語専攻課程のカリキュラム分析―非母語話者教師養成の観点から―」『語文と教育』35, pp.30-49. (2)キルギスの高等教育機関の日本語学習者に対して、「キルギスの非母語話者日本語教師が行う実際の授業と理想的な授業」に関するアンケート調査を実施した。これによりキルギスの日本語学習者の一般的、理想的だと考える日本語授業の「型」がいかなるものであるかが明らかになった。本研究の成果は第73回中国四国教育学会の高等教育部会で発表し、同学会の『教育学研究紀要』に投稿した。 ・西條結人(2022)「キルギスの大学における日本語非母語話者教師の授業文化―日本語専攻学習者へのアンケート調査から―」『教育学研究紀要』67, pp.86-91. (3)日本語教育における授業文化に関する先行研究をまとめるとともに、その成果をレビュー論文として論文化する作業を進めている。2022(R4)年度中での論文投稿を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021(R3)年度に日本国内とキルギスで予定していた授業動画の収集については、新型コロナウイルス感染症拡大防止等の理由で移動・渡航の制限もあり、実施することができなかった。一方で、キルギスの大学における日本語主専攻課程カリキュラムや国家スタンダードの収集及び分析を行い、キルギスの高等教育機関の学士課程、修士課程において第一言語として日本語を専攻する学習者がどのような理念に基づく教育プログラムを受けているのかという観点から、キルギスの非日本語母語話者教師の教育的背景を明らかにすることができた。さらに、キルギスの大学で日本語を専攻する学習者に対して授業文化に関するアンケート調査を行い、論文としてまとめることができた。 授業動画データの収集については、調査協力を依頼しているビシケク国立大学とキルギス国立総合大学の教員とオンライン会議を行い、研究代表者が現地に渡航できない場合でも、調査を実施できるような形を検討した。前述の2つの機関の教員と協力しながら、2022(R4)年度内にデータ収集を行う計画にしている。 これらのことからも研究全体としては、おおむね順調に進展してきたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022(R4)年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響が続き、キルギスへの渡航は難しいことが予想される。また、日本国内の教育現場についても外部の者が機関の中に入って調査を行うことは困難であると考えられる。予定している授業動画の収集については、関係機関や関係者の協力を仰ぎ、オンラインでの収集に切り替えて、調査を行うことも検討している。 2021(R3)年度に実施したキルギスの学習者に対するアンケート調査の結果も踏まえながら、研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2021(R3)年度は、日本国内やキルギスの高等教育機関での調査を予定していたが、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、渡航できず、現地調査を行えなかった。そこで、本研究での課題をより詳細に明らかにするための基礎的な研究を中心に行った。2021(R3)年度の物品費の割合が、基礎的研究に必要な文献の収集や、オンラインでの研究活動整備のための物品購入等により、研究期間全体の当初計画よりも大きくなっている。特に、旅費については、今後も新型コロナウイルス感染症拡大の影響が見込まれることから、現地調査の代替策として、可能な限りオンラインで対応することを検討し、研究開始当初に計画していた旅費を、引き続き文献収集やオンラインでのデータ収集等に対応するための物品費等に充てることも検討している。 これらの対応により、本研究の課題をより円滑に遂行するための研究基盤を整備していく予定である。
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Research Products
(5 results)