2021 Fiscal Year Research-status Report
文化伝達に着眼した幼児期の「集団の育ち」に関する評価
Project/Area Number |
21K02326
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 集団の育ち / 幼児 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児は,園生活において,他児とかかわり,刺激し合って発達していく。我が国の保育実践では,人とかかわる力の育成が重視され,多くの保育者が,個の発達とともに,幼児の育ち合いや集団全体のさまざまな変化を「集団の育ち」として実感している。しかしながら,「集団の育ち」は明確に整理ができておらず,実証的な研究の難しさがあった。本研究の目的は,1)保育者が感じている「集団の育ち」とは何かを明らかにし,2)「集団の育ち」を文化伝達という観点から捉えることの妥当性と意義を検討することである。 2021年度は,1)保育者が「集団の育ち」を感じるエピソードの予備的分析,2)集団づくりをテーマにした実践記録の検討を行った。また,研究協力者(西川由紀子・京都華頂大学教授,服部敬子・京都府立大学教授)との研究会を5回開催して,保育実践における集団づくりに関して意見交換を行った。その中で,次のような知見を得た。1)4,5歳児クラスにおける「集団の育ち」エピソードは,幼児が自分たち主導で何かをする姿が共通して取り上げられやすいが,3歳児クラスにおける「集団の育ち」のイメージは,依拠する保育観による違いがあるかもしれない。2)「集団の育ち」は,個人の発達に影響を受ける側面がある一方で,個体能力とは相対的に独自の発達プロセスをたどることが実践的に示されており,集団づくりをめぐる保育理論上の論点となっている。3)集団づくりの実践において,幼児同士の関係形成にのみ焦点が当てられず,遊びや当番などの活動を媒介にして展開されることが多く,活動の共有や文化伝達という観点が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の予備分析や実践記録分析を踏まえて,集団の育ちに関する実践知を,実践経験の長い保育者4名に対するインタビュー調査によって明らかにする予定であったが,新型コロナウィルス感染症の影響によって実施できなかった。そのため,十分なデータに基づいて,集団の育ちを構成する要素を抽出することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の状況を見て,保育者に対する,「集団の育ち」に関する対面インタビューを実施する。感染症との関係で対面が難しい場合,オンラインでのやりとりをサポートして,インタビューを行う予定である。その内容は,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析し,「集団の育ち」として重視されている要素を明らかにする。 また,集団づくりに関する実践記録の分析は継続して,保育者が目標にしている集団イメージとその形成のための手立てを明らかにしていく。その際,社会性の発達に着眼した関係論的視点と,遊びや手伝いなどの活動論的視点から,年齢クラスごとの特徴,ならびに年齢クラスに共通して確認できる特徴を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響で,インタビュー調査が実施できず,研究協力謝金,インタビューの逐語記録に伴う謝金,ならびにその分析のための器材の必要を支出しなかったためである。インタビュー調査に関わる費用,実践記録の収集とPDF化とその分析に必要な器材の購入費として利用する予定である。
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Research Products
(1 results)