2023 Fiscal Year Research-status Report
文化伝達に着眼した幼児期の「集団の育ち」に関する評価
Project/Area Number |
21K02326
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 集団の育ち / 幼児 / 実践知 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児は,保育園・幼稚園などの場において,他児とかかわり,刺激しあって発達していく。本研究は,幼児の「集団の育ち」を構成する要素を整理して,文化伝達という観点からとらえる妥当性と意義を検討するものである。 2023年度は,研究協力者(西川由紀子氏・京都華頂大学教授,服部敬子氏・京都府立大学教授)と共同して,保育経験30から40年のベテラン保育者4名に対してインタビューを行い,集団づくりにかかわる実践知を検討した。インタビューにあたり,ある年長児クラスの実践記録から新学期の様子を読んでもらい,自身がこのクラスの担任であることを想定してもらった。このクラスには,「気になる子」が複数おり,他方で課題をそつなくこなす「できる」子どもたちがグループを作り,「気になる子」を排除する状況があった。インタビューでは,このクラスの子どもたちへの願い,そのためにまず実践すること,その後の想定される取り組みに関する質問を盛り込みながら進めた。インタビュー内容から,今回の対象者について次のようなことが明らかになった。1)クラスの子どもたちに期待することとして,安心して自分を出し合える親密性と,相互の権利を尊重する対等性を重視している。2)そのために,子ども同士の関係づくりと,それぞれが楽しさを感じる活動づくりに関わる複数のことを同時に進めようとする。3)「できる」と思われている子どもに注目して,対応する。4)子ども同士の親密性が生まれるのは偶然によるところが大きいが,保育者はそのための活動を準備し,子ども同士の出会いを見逃さないようにしている。 「集団の育ち」を親密性と対等性という観点からとらえる際,それぞれに対して,子どもの社会性発達と保育者による指導がどのように関与するのかを検討することが,今後の課題となることを整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
保育現場において,保育者が新たに導入した遊びがクラス内に伝播していくプロセスを,観察によって明らかにする予定であったが,日程調整が難しく,実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度に実施したベテラン保育者に対するインタビュー内容を,質的に分析して,「集団の育ち」を促すための実践知について,それぞれの保育者の共通性と相違を検討する。また,インタビューの導入で用いた実践記録の続きを,インタビュー対象の保育者に読んでいただき,その展開に関するコメントを追加でインタビューして,「集団の育ち」関する知見をさらに掘り下げていく。 主に2歳児クラスにおける文化伝達場面に焦点を当てた観察を実施して,幼児同士の親密性と対等性の基盤が形成されていくプロセスを分析し,「集団の育ち」に関する仮説を提案する。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査をそれぞれの現地で行う予定であったが,リモートで実施したため,旅費などが不要となった。また,インタビューの逐語記録を業者に依頼せず,文字起こし機能付きの録音機材で安価に逐語記録ができた。 今後,インタビュー対象者に集まっていただき,専門的知識を提供してもらうのに必要な費用,保育現場における観察を実施する補助業務に要する費用,ならびに研究成果を発表するための旅費などに利用する予定である。
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[Book] 発達保障入門2023
Author(s)
越野 和之,木下孝司
Total Pages
95
Publisher
全国障害者問題研究会出版部
ISBN
9784881341162