2022 Fiscal Year Research-status Report
子ども食堂の交流拠点機能研究:漢字・食育融合教材の開発と実践による教育効果の評価
Project/Area Number |
21K02343
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
設樂 馨 武庫川女子大学, 文学部, 准教授 (70461019)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉井 美奈子 武庫川女子大学, 教育学部, 准教授 (60413481)
横路 三有紀 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 講師 (80757188)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 食育プログラム / 食育調査 / 子ども食堂 / 交流拠点機能 / ピアエデュケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
子ども食堂を交流拠点とし、小学生と大学生の食生活向上の機会となる、食育プログラムとして、食育を題材とする漢字教材開発に取り組んだ。研究実施計画では、今後、交流拠点機能の検証をしていくが、今年度までで以下の通り、食育プログラムの開発と、現状の食育調査、交流機会の活性化(コロナ以前と同程度の交流機会の回復)を達成したところである。具体的内容として、3点を挙げる。 ①食育プログラム開発:6月から月に1回、専門の異なる3学部の学生から成る計6班が、共同作業によって、一つの食材をテーマに構成した「わたしは誰(何)でしょう」というクイズ形式の教材を作成、子ども食堂で教材を使って小学生に教授し、正解した小学生に、食材が漢字でデザインされた缶バッジを作成して配布した。食材、例えば「リンゴ」が分かった小学生に、漢字表記「林檎」とリンゴの絵を組み合わせたバッジを、その場で製作して渡すことで、小学生は食材の知識とともに漢字表記に親しみ、大学生は大学生間のピアエデュケーションとして、教育学の教授法、食物栄養学の食育、日本語学の漢字の知識を生かし、交流する。また、大学生はこれらのプログラムの成果を市民まつりや、近隣商業施設での展示紹介、子ども食堂を支援するA市職員等、広く一般にプログラム内容を発信する活動にも取り組んでいる。 ②食育調査:過年度の調査により、子ども食堂の小学生を対象とすると、統計処理が可能な調査対象を集められないことが判明していた。よって、今年度はWEBにより一般の男女に、子どものころの食について調査する形式で、食育調査を実施した(理由に詳述)。論文作成を進め、次年度は学会発表等、成果を発信したい。 ③交流機会:食育プログラム開発に加わる大学生を対象に、過年度同様、WEBアンケートを活動前と活動後に実施した。交流機会を活性化し、交流がどのような変化をもたらすのか、データを蓄積している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①食育プログラム開発・食育を題材とする漢字教材:昨年度までのコロナ禍による遅滞を踏まえ、大学生間の交流促進と食育向上、子ども食堂での子どもとの交流促進と食育向上について、改善可能な食育を題材とする漢字教材を考案・実践することで、食育プログラム開発として前進できた。 ②食育調査:昨年度7名の半構造化面接では、現状の問題点を洗い出すために必要な調査者数が確保できなかった。そのため、クラウドソーシングの委託によるアンケート調査を検討、調査項目の修正により、18~29歳の男女各250名の回答を集計することができた。対象者属性の整理及び、若年世代における現在の生活習慣病予防や改善を意識した食生活の実践状況と学童期の食習慣に関する因子との関連を検討し、因子分析及び質的分析に取り組んだ。また、若年世代における食生活のQOLに関連する現在の食行動と学童期の食生活に関連する因子との関連も考察することで、大学生と小学生の食育が向上するための課題を抽出している。昨年度に進まなかった調査を改善し、調査そのものは既に終了して、論文作成・学会発表のめどが立っている。 ③交流機会:子どもと大学生の交流機会はコロナ以前に回復し、研究計画における進捗状況はおおむね達成できた。そこで、達成を踏まえた今後の課題として、子ども食堂では食事を作るスタッフとの関わりがあり、市民まつりでは一般市民との触れ合いがある。こうした人々を加えて交流を拡散・深化することで、子ども食堂そのものの交流拠点機能を強化できるのではないか、検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
①子どもと大学生の食育プログラム開発:毎月展開する、教材を使用した食育は継続していくことで、プログラムの検証が進むものと考える。そのため、取組を継続することが推進となる。 ②食育調査:データ収集と分析が進んでいるので、学会発表や論文作成により、成果の発信をしていく。 ③子ども食堂の交流拠点機能の検証:理由に述べた通り、交流機会は回復して既に計画を達成している。そのうえで見えてきた課題として、「子ども食堂」を運営するスタッフのみならず、「子ども食堂」を知らない地域住民をも取り込む交流機会を模索し、研究の推進を図りたい。具体的には、子どもが美味しく食べられるスパイスカレーの開発を目指し、地域のカレー屋の店員(多くは外国にルーツを持つ人々)の協力を得るなかで、子ども食堂を知ってもらう。また、カレーの開発に、子ども食堂で食事を作るスタッフの協力も求める。このように、大学生が大学から地域へと踏み出すことで、接点が無かった地域住民にも交流機会を構築できるように計画を拡大し、試行していく。多文化共生社会へも貢献することを見込む。
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Causes of Carryover |
国際学会「QUALICO 2023」での発表を予定していた。「QUALICO 2023」では交流機会による食育向上を発表したかったが、前年度は交流機会が十分に確保できなかったこと、食育調査の調査者数が想定より少なかったことなどから、発表に十分な研究資料を得られずに“Notation of ingredients for elementary school students- Comparison of public broadcasting and textbooks -”と基礎研究に変更して応募したものの、発表に採択されず、参加登録や渡航準備に使用予定の助成金が使用できなかった。再来年度、食育調査に基づき国際学会発表に応募し、使用年度は変わるものの使用計画を立て、準備を進めている。
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