2021 Fiscal Year Research-status Report
子育て支援における保育者を中心とした多職種協働モデルの開発
Project/Area Number |
21K02347
|
Research Institution | Tokyo Kasei Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 清美 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (30517305)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 子育て支援 / 多職種連携・協働 / 役割開放 / 働き手要因 / 関係性要因 / 環境要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は多職種連携に関する国内外の文献を収集し、内容について整理検討した。多職種連携はこれまで医療福祉分野で研究が蓄積されており、それらを検討した結果、本研究では以下の2点について調査することとした。 ①多職種連携の類型:多職種連携には多職種参加型(multidisciplinary)、多職種連携型(interdisciplinary)、超職種型(transdisciplinary)の3類型があり、中でも協働連携に加えて「役割開放」を含む超職種型モデルが有効とされる。従って、互いの役割の境界を越えて働くことを許容する「役割の開放」がいかなる条件の下で行われるのかを明らかにする必要がある。医療福祉分野における多職種連携は「チーム医療」として研究されてきた歴史があり、チーム医療の働き手の認識と実践に関する実証研究からは、専門性志向、患者志向、職種構成志向、協働志向の4要素の関係が析出された。これらの類型は子育て支援における多職種連携にも見出されるか、医療福祉分野との相違点はあるかを明らかにする。 ②多職種連携の困難と阻害要因:多職種連携を促進する要因だけでなく、困難や阻害要因を明らかにした研究を検討した結果、個人的な側面である働き手要因、関係性要因、環境要因のそれぞれに 関係性要因が最も強く影響すること、①で述べた4要素の緊張関係やバランスも連携を阻害する要因となることがわかった。 以上の検討により、子育て支援の場で役割開放を含む超職種型の多職種連携の可能性について明らかにするため、探索的なインタビュー調査を計画した。実施途中ではあるが、子ども家庭支援センターの職員の語りからは、子育て支援における多職種連携の場として要保護児童対策協議会が重要であること、各専門職の専門性のバックグラウンドとなる法的根拠の相違が阻害要因となっていることなどが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の所属機関が変更となったため、初年度となる2021年度は新規の授業や教育業務に従事することとなり、当初の計画通りに研究を進めることができなかった。2021年度後半は多職種協働連携に関する国内外の文献を収集し、医療福祉分野における先行研究の整理検討を行った。その結果をふまえて、子育て支援の従事者を対象としたインタビュー調査を実施した。引き続き、保育所や子ども園、地域子育て支援センターで専門職として働く職員に対して調査を行う。2021年度末には、「子育て支援における多職種連携協働(IPW)研究会」を発足させ、堀聡子氏を研究分担者として招聘した。研究会には子育て支援の研究者が複数参加し、児童相談所職員、保育所所長、スクールソーシャルワーカー、子育て支援のNPOの代表等に講師依頼を行った。並行して、2022年度に実施する「子育て支援における多職種連携」の量的調査を共同で実施する準備を進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在実施しているインタビュー調査については、可能な限り子育て支援の場に関わる全ての職種に対して実施する予定である。子育て支援における多職種連携の全体図を描くと共に、多職種連携における役割開放や類型化について検討する。2022年度は2つの量的調査を実施する。第一に、保育者の抱える子育て支援業務の量的把握である。特別な配慮を要する家庭、在園児の家庭、地域の家庭に対する支援業務のそれぞれに関わる時間や負担感等を明らかにする。第二に、現在実施しているインタビュー調査から得られた結果をもとに、子育て支援における多職種連携の困難や阻害要因 について量的調査を行う。地域子育て支援の分野においては、地域子育て支援の現場に精通する堀氏から助言を仰ぎ、調査項目の精査や調査対象の選定などを進める予定である。
|
Causes of Carryover |
研究代表者の所属機関が変更となり、研究に遅れが生じたため。
|