2021 Fiscal Year Research-status Report
不適切養育が子どもの心の発達に及ぼす影響:多角的手法による生物学的基盤の解明
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21K02352
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
牧田 快 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (10726607)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 不適切養育 / 発達過程 / 縦断研究 / 多角的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
不適切養育(虐待やネグレクト等)を経験することで,神経発達症様の症状やトラウマ関連障害の症状が発現するリスクが高まり,多動性障害,気分障害,人格障害などの重篤な精神疾患へ推移していく可能性もある。このような症状は,重症化率,併存率も高く,治療応答性が低い。よってこのような子どもには,より早期の対応が望ましく,教育社会面での支援が急務である。しかし,現状では不適切養育を背景要因としたこのような疾患様は,そうでない他の発達障害との鑑別困難性から,適切な診断とそれに基づく対応の構築は未だ十分とは言えない。 本研究では,不適切養育を受けた子どもを主な対象とし,認知神経科学,小児発達学,分子生物学の手法を用いて,子どもの心の発達を多角的に,また同じ参加者を複数回計測することで縦断的に検討することを目的としている。計測内容は,質問紙による心理・臨床指標,MRIを用いた脳構造・脳機能データ,唾液採取による生体試料の収集である。本研究から得られる知見は,不適切養育を受けた子どもの心の発達の理解とその対応方策,社会的養育の在り方やその構築方法の確立に寄与するものである。 研究対象は児童青年期の不適切養育下にあった子ども(不適切養育群)と,対照となる子ども(定型群)である。同一対象に対して年1度の頻度で複数回データを収集することにより、横断データのみならず縦断データとしてその発達の過程を計測する。 初年度(令和3年度)は実験内容・実験環境の構築を行い、次年度以降のデータ収集・解析に向けて準備を整えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響もあり,参加者の実験への参加に悪影響が出たことが要因の一つである。また,次年度(令和4年4月)に研究代表者の所属変更とそれに伴う異動等があり,研究実施機関での研究実施体制・役割分担の見直しが必要となったことも影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方策としては,研究実施機関である福井大学において,不適切養育群と定型群のデータ収集を引き続き行う。得られたデータは,新たに研究補助員を雇用し,その取り纏めと整理を行い,その後解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響により,国内外を問わず対面での学会が中止・自粛となったことで旅費・宿泊費に未使用分が生じることとなった。人件費・謝金についてもCovid-19によるキャンセルがその要因となっている。次年度では,ワクチンの複数回接種も広まりCovid-19による悪影響も軽減してきており,対面(あるいはハイブリッド)での学会も再び開催されてきているため,旅費・宿泊費については当初の計画通りに使用する。人件費・謝金については,研究実施体制を見直し,新たに補助員を雇用するなどして運用していく予定である。
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