2023 Fiscal Year Annual Research Report
Trauma-informed care/systems for young children and children with special needs
Project/Area Number |
21K02381
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
野坂 祐子 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (20379324)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | トラウマインフォームドケア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幼児や障害等の特別なニーズのある子どもへのトラウマインフォームドケア(TIC)実践とその評価を行い、組織のあり方について検討することであった。 最終年度の調査としては、養育者の心身の健康状態や生活状況等により養育困難となった乳幼児の社会的養護を行う乳児院、児童養護施設乳所児童の在籍率が高い小学校、知的障害のある生徒の特別支援学校を中心に、定期的なフィールドワークと教職員を対象としたインタビュー及びアンケートを行なった。 分析の結果、虐待・ネグレクト等を受けた乳幼児と関わる乳児院の職員にとって、胎児期および発達性トラウマをかかえる乳幼児への関わりの難しさに加えて、乳幼児の措置等の変更にまつわる無力感等の喪失に対する反応に苦慮している様子が把握された。乳幼児の安定したアタッチメント対象としての役割が求められながらも、見通しのきかない措置変更に直面することは、職員にとっての安全感が揺さぶられるトラウマティックな状況となりうることが示唆された。同様に、社会的養護による児童生徒と関わる小学校と支援学校の教員にとっても、児童生徒に長期的な視点で支援を行うなかで措置変更や頻繁な転居等という予期できない変更にさらされることは大きなストレスとして感じられていた。一方、調査対象とした施設と学校では、体系的なTICの職員研修と継続的な事例検討等を実践しており、その中心的課題はいずれも職員のメンタルヘルスと組織内の連携であった。職員の二次受傷等に代表されるトラウマの間接的影響を職員自身が理解し、対等で民主的な話し合い等の組織内実践を行うことは、児童生徒への再トラウマを防ぐ手立てとして有用と考えられていた。 研究期間を通して把握されたTIC実践については、その成果を書籍等にまとめて公表した。
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