2022 Fiscal Year Research-status Report
ナチュラルサポーターによる自閉スペクトラム症児への日常的支援モデルの構築
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21K02387
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 特別支援教育研究所, 客員研究員 (80326991)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症特性 / ナチュラルサポーター / 多様性 / 語用論的情報の活用 / 視線 / 中枢統合の脆弱性 / 心情推測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,自閉スペクトラム症(ASD)児のコミュニケーションと関連の深い語用論的能力に対する実証的検討を行い,そのデータに基づいたナチュラルサポーターによる日常的支援モデルを構築し,その効果を検証することである。ナチュラルサポーターとは,養育者をはじめとする家族や保育者などの障害児者と日常をともに過ごす人々である。 2022年度は,母子の相互作用場面の映像を用い,ASD特性の連続体上での語用論的情報活用の特徴とその関連要因を検討した。その結果,心情推測の手がかりに着目すると,ASD群の約6割は単一の手がかりのみを使用しており,TD群は1名を除き,複数の手がかりを使用していた。ただし4割弱のASD群も複数の手がかりを使用しており,ASD・TD群の多様性及び方略の違いが明らかとなった。この多様性に着目し,参加者全員を単一・複数手がかり群に分けた。この手がかりパターンは,生活年齢,抽象語理解検査及び表情識別課題の正答率には関連がなかった。一方,心情推測課題での注視点は,単一手がかり群が複数手がかり群よりも,目領域への注視頻度が低かった。AQ総合得点及び下位尺度の社会的スキル,コミュニケーション,想像力の各得点では,単一手がかり群は複数手がかり群に比べ,得点が高かった。以上から,語用論的情報活用でのASD特性との関連が示唆された。日常場面では,話者の心情推測時の手がかりとしての情報の統合がASD特性の程度によって異なることをASD・TD双方が認め合い,個々の特性を長所として活かせるような配慮や支援が欠かせないといえた。 また,2022年度は,ナチュラルサポーター養成講座を8回開催し,ASDをはじめとする神経発達症群に対する基礎的な理解と研究知見に基づいた支援に関する講演及びワークショップを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、実験実施が遅れたとともに,ナチュラルサポーターの養成講座の実施回数も当初予定より少なく、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に実施した実験から得られたデータを基に,ASD児の語用論的能力の特徴を把握し,支援の手がかりを得る。これらにより得られたデータから,ナチュラルサポーターが日常的支援において注目すべき手がかりを明らかしたうえで,日常的支援を実施し,日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度等によってその効果の検証を行い,ナチュラルサポーターによるASD児への日常的な支援モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ほとんどの学会等がオンライン実施になり、旅費の支出が大幅に減少したためと、対面での講座等が困難になったため、購入予定物品および、人件費と謝金の支出が少なくなったため、次年度使用額が生じた。2023年度には、対面での講座等をより多く実施する予定のため、前年度購入予定であった物品を購入するとともに、人件費、謝金を前年度残額で支出する。また、学会及び研修会への出席のための旅費等にも前年度残額を充てる。
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