2022 Fiscal Year Research-status Report
幼児教育におけるカリキュラム・マネジメントという営為の生成に関するフィールド研究
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21K02417
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Research Institution | Shiraume Gakuen University |
Principal Investigator |
本山 方子 白梅学園大学, 子ども学部, 教授 (30335468)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | カリキュラム・マネジメント / 幼児教育 / 保育者 / 質的研究 / インタビュー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一に、幼児教育におけるカリキュラム・マネジメントの実際の営為を発生的に丹念に描くことであり、第二に、カリキュラム・マネジメントという営為を形成的側面とシステム的側面から理論的に明らかにすることである。 2年次の2022年度は、カリキュラム・マネジメントの実際の営為について、A幼稚園における調査を継続して実施した。具体的には、A幼稚園における3歳児と5歳児の担任教諭各1名に、月1回程度の半構造化面接を年間継続して対面またはオンラインにて実施した。 面接では、直前の約1か月の保育の取り組みと子どもたちの様子、保育上の工夫と課題、今後の予定と展望などを尋ね、次のような点が示唆された。第一に、いずれの保育者も、クラスにおける事象をゆるやかに秩序立て、出来事間を関係づけ、自己の関与の影響を評価し意味づけていた。第二に、これまでの経験や園の慣習、自らの保育観などに照らして、既定路線や前提の見直しが語られた。眼前の子どもたちの姿や活動の展開が保育者の予想と異なる場合、自らの思考を更新しようとしていた。以上の点は、初年次の調査と共通していた。第三に、カリキュラムのデザインやマネジメント自体への私見がそれぞれに語られた。R教諭はコンピテンシーベースでカリキュラムをつくるようになり、子どもの遊びや思いを自分の文脈に入れ込んできたことを反省していた。Q教諭は子どもから活動を立ち上げることを心がけ、大人が規定のこだわりを保留したことで、子どもにどうしたいかたずねることが増え、子どもの自由な発想に基づく活動が展開されたという事象をふまえ、PDCAサイクルに懐疑の目を向けていた。 カリキュラム・マネジメントの営為の理論化にむけては、Schon, D. A.の反省的実践に関する議論やMoss, P.の保育の質の議論、Senge, P.の学習する組織の議論などについて検討を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」については、A幼稚園での調査について、2名の保育者から継続して協力を得て、順調に面接調査を進めることができた。その調査から、研究上の新たなアイデアを得て、仮説生成の可能性を予期することができた。但し、園のカリキュラム策定の志向性はインタビューにおいては初年次ほどうかがえず、カリキュラム・マネジメントの営為の検討を中心に進めている。カリキュラム・マネジメントの理論化についても、徐々にではあるが進展があった。「日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」については、B幼稚園の準備状況に立ち合っており、一部、調査計画を見直したものの、今年度は開始できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「①カリキュラムのデザインとマネジメントに関する理論的研究」と、「②園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」と「③日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」から成る。 このうち、「②園のカリキュラムの策定に向けたデザインとマネジメントの研究」については、初年次よりA幼稚園にて順調に調査を行い、3年次に当たる2023年度は同園にて初年次より協力いただいている1名の保育者に継続して、月1回程度の半構造化面接を実施する予定である。但し、コロナ禍の影響を受け、これまでのフィールド観察が不十分である。調査の一貫性を優先して、当初の計画を変更し、保育参観は保育者の語りの解釈の妥当性を得るために実施するものとし、保育者への面接を中心とした調査とすることとしたい。 「③日々の実践に基づくカリキュラムのデザインとマネジメントの研究」については、B幼稚園で園のカリキュラムの策定が進むことから、カリキュラム開発の会議を中心に、フィールド調査を実施する予定である。 「①カリキュラムのデザインとマネジメントに関する理論的研究」については、Schonの研究やMossの議論に示唆を求めることが可能である。また、Luhmannの社会システム論については新訳と合わせて検討を進めたい。Ricceurの物語り論についても検討の端緒につきたい。理論形成は、②と③の分析と並行として3年次の後半以降にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2022年度はコロナ禍のため、調査園への訪問回数が限られた。また、パソコン関係の購入を目指したが、納期等が不安定で購入できなかった。2023年度においては、調査園訪問の調査旅費を使用するとともに、必要な機材や分析ソフト、資料を購入する。
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