2021 Fiscal Year Research-status Report
Research on teaching music creation in Finnish school education
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21K02437
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
徳永 崇 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90326497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多賀 秀紀 富山大学, 学術研究部教育学系, 講師 (10824831)
河添 達也 島根大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20273914)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フィンランド / 音楽創作 / 音楽教育 / Opus1 / 作曲 / 即興 |
Outline of Annual Research Achievements |
国連が発表する「世界幸福度報告書」で5年連続で1位に選ばれるなど、高い水準の福祉や教育政策で知られるフィンランドでは、2014年に我が国の「学習指導要領」に該当する「National Core Curriculum」が改訂された。そこでは、多様性や持続可能性など未来を見据えた内容が盛り込まれた。それを受け、2017年には芸術教育のカリキュラムも改訂され、音楽科については、全学年の教育目的に作曲や即興演奏など音楽創作指導を実施することが明記された。しかし、教育現場の教員は必ずしも音楽創作に精通しているとは限らず、現場からは少なからず混乱の声が挙がった。このような要望に応えるため、作曲家が中心となり、大学や音楽支援財団から援助を基に創設されたプロジェクトの一つとして、ウェブサイトに無料で音楽創作の教材や方法を提示する教育資料データバンク“Opus1”が挙げられる。本研究はOpus1の実態を調査し、我が国の音楽教育における音楽創作指導の充実に向け、様々な知見を得ることを目的としている。 初年度にあたる2021年度は、研究代表者が約1年間にわたってフィンランドに滞在し、Opus1の関係者への取材や、教育現場の視察等を行った。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大により、共同研究者2名のフィンランド渡航を断念した他、大人数クラスへの訪問が許可されず、少人数や個別レッスンのみ視察せざるを得なくなった。この他、本データバンクの普及の程度について調査するため、教育機関と連携をとりつつ、各種学校の教員へアンケートを実施する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
作曲の教育資料データバンク“Opus1”の活用法は多岐にわたるが、少人数のレッスンでは、必ずしも単独の教材として用いられているわけではなく、教師が様々な教材を臨機応変に組み合わせる事例が多くみられた。それに対し、音楽院などの比較的規模の大きい機関における大人数クラスでは、本データバンクの教材に基づいて授業が進められている。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大によって、後者への立ち入りが困難となったため、本データバンクの効果的な使用事例について視察することができなかった。なお、共同研究者2名がフィンランドへ渡航できなかったためにZoomによる会議を研究活動の中心とし、計上していた渡航費用はその環境を整えるために充当した。期間中、ZOOMによる情報共有の場を3回持ち、その都度研究の進捗状況を確認し合うとともに、フィンランド・日本両国の音楽教師へのアンケート調査項目について検討を行ったが、フィンランドにおける教材使用事例の追調査によって質問項目の修正が必要と考えられることから、アンケート調査の実施には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
作曲の教育資料データバンク“Opus1”は優れた教材ではあるが、フィンランド国内における教員の認知度や、活用の実態については調査がなされていない。このため、今後はアンケートによる調査を実施する。併せて、我が国の教育現場における音楽創作指導の実態についても、アンケートによる調査を行い、教師が求める教材についての基礎情報を得る。並行して、2021年度に実施できなかった大人数クラスの実践の観察を行い、その教育効果について検討する。その上で、Opus1を参考に我が国の実情に合った教材を作成し、実際の教育現場で実証実験を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、共同研究者2名のフィンランド渡航が困難となり、断念したため相当額の未使用額が生じた。これについては、最終年度における講師招聘及び日本国内での実証実験等に補填する。
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