2022 Fiscal Year Research-status Report
自然情報と防災を包括した教員養成地学分野の防災教育プロセス構築
Project/Area Number |
21K02458
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤林 紀枝 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (20238603)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高清水 康博 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (10446370)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 防災教育 / 津波 / 地震 / 火山噴火 / 大地の変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,a) 防災教育の観点から小・中学校理科の地学分野「流水の働き」,「土地のつくり」,および「大地の変動」の学術的基盤の再整備を行い,その上で,b) GIGAスクール時代に最適化したオンラインでのリアルタイム自然情報または情報データベースの活用,c) 身近な自然素材の活用,およびd) 災害発生(水害,火山災害,地震災害)の危険予知と避難行動の4点からなる一連の防災教育プロセスの構築を目指している。本年度は、a)の防災教育の観点から小・中学校理科の「流水の働き」,「土地のつくり」,および「大地の変動」の学術的基盤の再整備およびd)の災害発生(水害,火山災害,地震災害)の危険予知と避難行動の研究と実践を行なった。前者については,福島県浪江町請戸地区においてジオスライサーを用いた地質試料を採取し,地層の性状についての科学的な検討をした上で,複数枚の剥ぎ取り標本を作製した。このことにより,授業時間中になかなか野外観察ができない場合でも,地質試料を教室内で観察することができるようになった。この教材は令和5年度の地学実験にて実践予定である。一方,後者については新潟市内のI中学校において2回の津波防災に関わる防災授業を実施し,さらに市内で開催された児童の学習発表会において講評を行った。防災教育に関する授業づくりの研究では,日本海東縁地域に特徴的な地震津波についての授業において新しく開発した約4mの実験水路による波浪実験を行うことで子どもの地震津波に対する科学リテラシーの向上を図った。水路実験の授業ではタブレット端末を活用し,リアルタイムで撮影した動画を活用する授業を開発した。火山災害については,新潟市の南部に分布する中期中新世角田山火山岩類において,火山性の海底地滑りとマグマ水蒸気爆発を発生源とする海底土石流を明らかにした。身近な自然素材を活用した野外観察授業を開発中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,国内の移動制限が大幅に緩和されたことから,福島県の野外調査によって「流れる水の働き」,「大地の成り立ち」や,「地震・津波防災」のための有効な理科教材用の試料採取をスムースに実施することができた。太平洋側で特徴的なメガスラストの活動によるプレート境界型(海溝型)巨大地震による津波堆積物の地層剥ぎ取り標本は,日本の理科教育にとって重要な教材づくりであった。また実験水路による波浪実験も予定通りに進めることができた。また,オンライン講義が継続されたことから,PC環境を活用して,一連の防災教育プロセスの構築の研究の1つである「GIGAスクール時代に最適化したオンラインでのリアルタイム自然情報または情報データベースの活用」の予察的な授業実践を行った。Hi-net・K-net地震データベース(防災科学研究所)を活用した3次元的な震源分布とプレート境界型地震と内陸型地震の震源の深さ,マグニチュードの違いを理解させる授業内容である。事前のアンケート調査からは,大学生でも平面的な震央分布図を3次元的視点から理解していないという実態がわかり,Hi-net・K-net地震データベースの活用より,プレート境界型地震と内陸型地震の震源分布を3次元的に理解させるため,教員養成用の授業開発が重要かつ有効であることがわかった。さらに,「身近な自然素材の活用」,および「災害発生(水害,火山災害,地震災害)の危険予知と避難行動」については,新潟市の南部に分布する中期中新世角田山火山岩類において,火山性の海底地滑りとマグマ水蒸気爆発を発生源とする海底土石流を明らかにし,新型コロナ感染症拡大により2021年度から会期が延期となった国際会議IAVCEI2023(2023年1月30日から2月3日, ニュージーランド)で発表する予定であったが,開催地の大規模水害により参加できなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は最終年度であることから,今年度作成した地層剥ぎ取り標本や実験水路を用いた波浪実験(津波を含む)を活用した防災教育の実践を実施していきたい。また,これらの成果を論文として公表することを目指す。また遅れている「土地のつくり」と「大地の変動」の教材として身近な地域素材である角田地域の火山性地滑りの教材化を行うとともに,自然情報または情報データベースの活用した震源分布の学習過程の開発を行う。海底火山の噴火に伴う土石流の学習教材の作成と成果の公表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナ感染症拡大により、2023年1月30日から2月3日に会期が延期となっ国際会議IAVCEI2023(ニュージーランド)に出席できず、旅費の使用ができなかった。また、新型コロナ感染症拡大により佐渡島や県外への移動が制約され、調査旅費及び調査補助者の旅費等が計画通りに使用できなかった。そのため、これらを繰越して、2023年度に使用する予定である。
|
Research Products
(1 results)