2023 Fiscal Year Research-status Report
表現遊びから音楽づくり、創作へと体系化された音楽教育プログラムの開発
Project/Area Number |
21K02478
|
Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
佐野 仁美 京都橘大学, 発達教育学部, 教授 (10531725)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡林 典子 大阪成蹊大学, 教育学部, 特別招聘教授 (30331672)
坂井 康子 甲南女子大学, 人間科学部, 教授 (30425102)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 音楽づくり / 表現遊び / 創作 / 音楽教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、音楽づくりや幼小接続についての最新の研究成果や実践事例を収集して、検討を加えつつ、研究分担者や研究協力者と協議して、5個のプログラムを考案した。その後、研究協力園や小学校の保育者・教員と話し合いを重ね、子どもの主体性をより重視する方向に修正を加えて、実践を行った。 幼児の表現遊びについては、幼児期から日本的な音やお囃子のリズムなどに親しむために、「お祭り」をテーマにしたプログラムを実践した。運動会の「よっちょれ踊り」から生活発表会に至る保育の中で、子どもたちの興味がどのように広がって、「お祭り」の実践に結びついていったのかという過程を、研究代表者による参観記録だけでなく、研究協力園の長期にわたる記録から確認することができた。 小学校の音楽づくりでは、2022年度に行った中学校の音楽教科書の分析をもとに、中学校の創作につなげるために、子どもたち自身の音感を重視した第4学年の旋律づくりのプログラムを実践した。「問いと答え」の形式を用いて、子どもたちが歌詞を考え、言葉を唱えることから旋律をつくるプログラムである。単発の実践で終わるのではなく、継続して実践を重ねることにより、子どもたちの意識や作品にどのような変化が生まれるかという点にも注目している。 さらに、本研究で考案したプログラムの一部を用いて、定時制高校でも実践を行い、それらが異なる年齢や背景を持つ人たちにも有用であることが確認できた。 実践で得られたデータは分析を進めており、その成果や研究の基礎となる音楽的な事柄について、日本音楽表現学会と全国大学音楽教育学会において口頭発表を行った他、3本の論文にまとめて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の推進方策に従い、2023年度には、子どもたちが本来備えているはずの民族的な感覚を重視したプログラムを実践することができた。研究協力園においては、「お祭り」をテーマに、子どもたちを主体とした保育実践を行った。保育者の協力の下、地域のお祭りや神社の見学をきっかけとして、子どもたちがお囃子や歌を考案して楽しむ保育や、保護者の協力を得て他の地域のお祭りを調べる活動、楽器をつくってエイサーを踊る保育など、プログラムから様々な広がりを見ることができた。幼児期から日本人の音感覚を重視するプログラムが、小学校へ十分接続可能であることが分かり、その方向性や、内容について具体的なイメージを持つことができた。 小学校の実践においても、昨年度の唱え言葉から旋律をつくる活動をさらにすすめ、「問いと答え」の形式で歌詞をつくり、子どもたちが音に出していろいろと試しながらつくった旋律を記譜へと発展させることができた。唱え言葉から旋律をつくる実践は、研究開始の2021年度より、同じ子どもたちを対象にして試みている。これらを継続して行うことにより、多くの子どもたちの感想からは「旋律づくりが楽しい」という意識が芽生えていることが明らかになり、プログラムを体系化する意義を感じることができた。 その一方で、前年度までの実践データについても分析を進め、明らかになった研究成果の一部を学会発表や、論文の形で公表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、今までに行った実践の内容を吟味し、幼児の表現遊びから小学校の音楽づくり、中学校の創作へとプログラムを体系化することを中心に進める予定である。 とりわけ、小学校の旋律づくりについては、研究開始年度の2021年度より、同一の子どもたちを対象にした実践を積み重ね、プログラムを体系化することによる教育効果を確認している。そこでは、唱え言葉をもとに、発達段階に見合った旋律づくりのプログラムを考案して実践を試みている。前年度の実践結果の分析をもとに、今年度もさらに進んだ内容で高学年のプログラムを考案して、実践を行う予定である。 最終年度である2024年度は、今までの研究成果を整理し、保育士・保育教諭・幼稚園教諭養成に資することを目的として、幼児期から創造性を育むための表現活動をまとめた図書を出版する予定である。 その一方で、前年度までの実践から得られたデータについても個別に分析をすすめていく。研究成果は、学会発表、論文の形で公表する予定である。2024年度は、日本音楽教育学会、全国大学音楽教育学会における学会発表を予定し、大学紀要に論文を執筆する他、一般の保育者に向けても、講習会の形で研究成果を伝えていく。
|
Causes of Carryover |
2023年度の研究分担者との会議は、すべてオンラインで行い、加えて細かい点については、頻繁にメール会議を開いて打ち合わせたため、交通費が不要になった。また、2023年度に行った学会発表のうち、一つは近隣大学での開催であったため、交通費が大幅に縮小でき、宿泊費は不要になった。2024年度に予定している研究成果発表のための図書出版についても、近隣の出版社が見つかったため、打ち合わせにかかる交通費を大幅に圧縮することができた。 2024年度には、遠方での学会発表を2件予定している。交通費、宿泊費が必要になる。最終年度の2024年度には、創造性を育てるための幼児の表現遊びに関する研究成果をまとめて出版する予定である。研究に関連する最新の資料を収集する必要があり、図書費、資料費、複写費が必要である。また研究協力者に、子どもの創造的な活動を支援するための劇遊びの歌や、BGMに用いる楽曲の創作を依頼する予定である。出版費用に加えて、楽譜浄書費、人件費が必要である。
|