2021 Fiscal Year Research-status Report
比較書字教育研究に基づく左利き者に有効な書写学習モデルの開発
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21K02488
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小林 比出代 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (10631187)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 書写教育 / Handwriting / イギリス / 書字 / NIRS |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の初年度にあたる2021年度は、「基盤研究(C)代表 2015~2018」(合計4年間)の3年め及び4年めに実施した、イギリスの Handwriting の教育の実状とナショナルカリキュラム(=日本の学習指導要領に相当)に準拠した Handwriting のテキストの在り方、及び、フランスの初等学校学習指導要領に示される書字教育の実状と学習テキストの在り方を検討していく中から生じた課題に関して、これらには、日本の小学校学習指導要領が示す国語科書写の学習内容に対する重要な問題提起が内在するとの推論を含め、日本における書写教育(書写指導及び学習内容)の在り方を検討する際の示唆を内包するといった仮説のもと、イギリスで出版された文献(未邦訳)に基づいて嚆矢的な考察を試みた。【①】 さらには、「基盤研究(C)代表 2015~2018」の2年め及び4年めに実施したNIRSによる実験のデータをふまえ、かつ、利き手の違いによる新たな動作ないしは学習の獲得に関する実験において、その被験者は、本来であれば、文字学習入門期の段階にある、初めて文字を書く子どもたちであることが望ましいが、現実問題としては難しい点を加味して、左利き者の書字活動に関する検討の先に、左利き者の書字教育の場面を想定し、仮に大学生を暫定的な被験者として実験を行い、次の2点を課題として論考をまとめた。 ○NIRSによる脳活動でのヘモグロビン濃度を、前額部の計測専用に開発された携帯型光トポグラフィ装置で測定し、実験データを蓄積する。 ○本実験の考察に必要な分析視点を整理する。 当該論考での試みを、利き手及び左利き者の書字に関し多角的に研究を行うための一助に意義づけたいと考える。【②】
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【①】から、イギリスの Handwriting の教育の在り方は、国情の違いはあれど、日本の書字教育の在り方を検討開発する上で多くの示唆を与えると考えられる。ひいては、特に文字学習入門期に先習する書字スタイルに関しても、イギリスでの基礎学力の担保、「読むこと」「書くこと」の能力の育成との観点から日本での在り方を検討するための肝要な要素が内在すると推察できる。 【②】からは、LQにより「左利き」と判断され、実際に日常の硬筆による書字活動は左手で行うが、毛筆のみ常時右手で扱う左利き者が存在するとの実態があること、ひいては、当該者や書字活動全般にわたり右手で行うよう指導され已むを得ず変更した左利き者に関しては、非利き手による書字行為は文字の学習活動になっていないとの重大な問題が内在していることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
「基盤研究(C)代表 2015~2018」の3年めに検証した、イギリスにおける Handwriting の教育の現状と、【①】で扱った当該文献での記述との異なりに関して、実地での調査を視野に入れて検証考察する必要がある。これからの研究課題として向かい合いたい。その上で、イギリスの Handwriting の教育の在り方を日本の場合に擬えて検討を重ねたい。 また、【②】の論考では、試みた実験及び考察に必要な分析視点を整理することに主眼を置いた。しかし、当該のデータも未だ限られた人数によるものであり、試論の域を出ない。【②】の論考での実験結果に基づいて、その傾向を類推はできるものの、断定に至るには更なるデータの蓄積と多角的な分析を要する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に伴う学会をはじめとする会議のオンライン開催によって、出張費がほとんど使用できない状態にあった。研究課題に関する視察や実験に関しても同様な状態にある。本年度は、社会情勢や現況に鑑みながら、1年めの研究課題も含め可能な形で当初計画に近づくよう進めたい。
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Research Products
(3 results)