2021 Fiscal Year Research-status Report
国定国語教科書を用いた酒類密造矯正教育の実態に関する歴史的研究
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21K02489
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安 直哉 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30230204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 『尋常小学読本』 / 酒類密造矯正教育 / 仙台税務監督局 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は2020(令和2)年1月に東京・神田の、とある古書店で、仙台税務監督局著『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』という図書を見つけた。「小学校教授細目」という言葉と「酒類密造矯正」という言葉の組み合わせに著しい違和感を覚えた。早速同書を購入して調査を始めた。本研究では研究対象を国語教科書教材に限定した。 理論的枠組みを整理する。大正時代前期の国語科は、全国一律に国定国語教科書が使用されていた。よって掲載されている教材は全国同一である。しかし、その教材の解釈においては、ある程度の幅が許されていた。しかし、それとて教材の主旨を逸脱しないという常識の範囲の話である。ところが、国語科教育の理論がまだ充分に成熟していない大正時代前期に、「酒類密造矯正」という極めて特異で偏った方針のもと、多くの国定国語教科書教材について常識を逸脱した教材解釈が、公権力の指導のもとで強引に為され、実践に移された。こうした歴史的事実の研究を通して、国語科教材研究の自律性を再認識する視点を得ることを本研究の目標とする。 酒類密造矯正教育の沿革を略述する。1899(明治32)年に自家用酒の製造が法律で禁止された。しかし農家などでは従来から自家用酒を醸造しており、法律で禁止されても一朝一夕にやめることはなかった。隠れて酒類を密造する庶民と、それを取り締まる税務署当局との激しい攻防が繰り広げられることになった。そこで仙台税務監督局は、教育に目を付けたのである。かくして酒類密造矯正教育が始まった。 文意をことごとく「酒類密造矯正」にこじつけて指導する『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』は、国語科教材解釈の多様性を矮小化し、国語科教材が内包する解釈の自由闊達さを根こそぎ枯らしてしまうものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』で取り上げられた課を、その内容から〈行事〉〈教養〉〈養生〉〈精神〉〈社会〉に分類した。2021年度はこのうち尋常科の〈行事〉教材と〈教養〉教材の前半を取り上げて考察した。その結果を論文として発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』で取り上げられた課を、その内容から〈行事〉〈教養〉〈養生〉〈精神〉〈社会〉に分類した。2021年度はこのうち尋常科の〈行事〉教材と〈教養〉教材の前半を取り上げて考察した。 2022年度は尋常科の教科書教材のうち〈教養〉教材の後半と、〈養生〉〈精神〉〈社会〉教材を取り上げる。 2023年度(最終年度)は、高等科の教科書教材について、〈行事〉〈教養〉〈養生〉〈精神〉〈社会〉のすべての教材を取り上げる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症蔓延のため、予定していた国内調査旅行に行けなかった。そのため旅費が使用できなかった。2021年度に予定していた国内調査旅行を2022年度に行い、2021年度分の旅費を使用する。
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Research Products
(1 results)