2022 Fiscal Year Research-status Report
国定国語教科書を用いた酒類密造矯正教育の実態に関する歴史的研究
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21K02489
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安 直哉 岐阜大学, 教育学部, 教授 (30230204)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 『尋常小学読本』 / 酒類密造矯正教育 / 仙台税務監督局 |
Outline of Annual Research Achievements |
仙台税務監督局は1916(大正5)年に『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』という冊子を(福島県を除く)東北各県内の酒類密造激甚地の小学校に配布した。同書では第二期国定国語教科書(『尋常小学読本』)の少なからぬ課について、『酒類密造矯正」という観点から文意を捻出して指導するように書かれていた。 本研究では『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』等で取り上げられた課を、その内容から〈行事〉〈教養〉〈養生〉〈精神〉〈社会〉に分類した。令和3年度は、このうちの〈行事〉教材と〈教養〉教材の前半を取り上げて考察した。令和4年度は、〈教養〉教材の後半、〈養生〉教材、〈精神〉教材、〈社会〉教材の前半を取り上げた。 本研究で調べた限りにおいては、酒類密造矯正教育は、単に濁酒密造のみにとどまらず、過度な飲酒行為の撲滅も図っている。その理由としては、家内の安全や治安の維持等の配慮があったものと思われる。ただ、そうした理由があったにせよ、酒類密造矯正を意図しては編纂されていない『尋常小学読本』に、酒類密造矯正思想を付加することは、木に竹を接ぐ行為に外ならず、相当に不自然な教授課程にならざるを得なかったと批判できよう。 例えば巻12第22課「主婦の務」では、『酒類密造矯正ニ関スル小学校教授細目例』では濁酒密造矯正を女子教育の柱として説いている。しかし、実際は自家用酒の醸造は主婦の職務とみなされ、自家用酒醸造技能の良し悪しが嫁ぐにあたっての目安となっていた。現実は、酒類密造矯正の理想とはあまりにもかけ離れていたのであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度と令和4年度の2年間でもって、『尋常小学読本』を用いた酒類密造矯正教育に関する考察を、ほぼ終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である令和5年度は、『高等小学読本』を用いた酒類密造矯正教育に関する考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
東北地方の図書館に出張して文献調査を行う予定であったが、コロナ禍のためそれができなかった。平成5年度は、コロナも収束してくると思われてるため、東北地方の複数の図書館等に出張して文献調査を行う予定でいる。
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Research Products
(1 results)