2021 Fiscal Year Research-status Report
高校での数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知の体系化と授業デザインの開発
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21K02511
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
中村 好則 岩手大学, 教育学部, 教授 (00613522)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高校数学 / 特別支援教育 / 学習困難 / メタ認知 / 授業デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
高校にも障害の有無に関わらず学習に教育的支援が必要な生徒が多く在籍し,年々増加している。彼らへの指導は数学教育でも重要な検討課題である。しかし,彼らへの支援は学習活動の支援(特別支援教育研究からの支援)が多く,数学の学習内容の困難性や数学学習に関するメタ認知の支援(数学教育研究からの支援)が必ずしも効果的に行われておらず,十分に成果を上げていない。また,数学教育研究の困難性やメタ認知に関する研究の多くは小中学生が対象であり,高校生を対象とした研究はほとんどないのが現状である。高校生の数学学習の困難性やメタ認知に関する課題は,小中学校までの困難性やメタ認知に関する課題が残っているだけでなく,高校数学の内容の高度化・抽象化や生徒の発達段階なども関連し,より複雑の様相を呈しており,大きな課題である。そこで,今年度は,高校の数学学習に支援が必要な生徒を対象に,テスト調査,質問紙調査及び訪問調査を行い,因子分析,観察法,再生刺激法によるインタビューなどによって,困難性とメタ認知を同定し,それらの関連性を考慮しながら体系化を図るための基礎的なデータを得た。再生刺激法によるインタビューでは,指導者及び対象生徒に対して観察法で得られたデータをもとにインタビューを行った。これらにより実際の授業のどの指導場面(学習場面)でどのような困難性やメタ認知が働くか,それに対してどのような支援が行われているかを指導者と学習者から直接知ることができ,数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を同定するための基礎的なデータを得ることができた。得られたデータをもとに高校の数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を考察し,それらの関連性を考慮しながら体系化を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行研究及び文献の調査結果をもとに,調査対象とする高校等を設定し,質問紙調査,テスト調査及び訪問調査などをそれぞれ行うことができた。また,それらの結果を因子分析,観察法,再生刺激法によるインタビューなどによって分析することで,数学学習に支援が必要な生徒の数学の学習内容の困難性や数学学習に関するメタ認知の課題を同定するための基礎的な資料を得ることができた。さらに,それらをもとに,数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を考察し,体系化を図った。次年度は,数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知とその体系を高校の実態に即して精緻化及び構造化するとともに,同定した数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を改善するための授業デザインを開発する。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究において,同定することができた高校における数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を精緻化するとともに構造化を図る。さらに,高校における数学学習に支援が必要な生徒の困難性とメタ認知を改善するための授業デザインをPDCAサイクルで開発する。そのために,授業デザインを開発するための研究協力校を選定し,研究協力を依頼する。開発する授業デザインは,①困難性とメタ認知の実態把握の方法,②困難性とメタ認知の体系化をもとに,各困難性とメタ認知の関連を考慮した支援,③多層指導モデルを参考にした,多数の生徒に見られる困難性とメタ認知(第1層),少数の生徒に見られる困難性とメタ認知(第2層),特定の生徒に見られる困難性とメタ認知(第3層)に対する多層的な支援,④指導の評価の方法,⑤ICTの活用の5点を検討し開発を行う。また,数学に関する側面(数学的な意味や概念,数学的な見方や考え方,数学的活動など)と学習者に関する側面(認知特性の分析,方略の選択的採用,動機づけなど)にも留意し,授業デザインの開発を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ感染症による影響で学校訪問等をオンラインで行ったために,そのための機材を購入したが,出張旅費の一部が残った。次年度は実際に学校訪問する予定であるため,そのための旅費の一部として使用する。
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