2023 Fiscal Year Annual Research Report
国語科の自律的言語運用を促進するアーギュメントを用いた協働的学習プログラムの開発
Project/Area Number |
21K02548
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
勝見 健史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (20411100)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 智一 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (70584572)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 国語科単元学習 / 言語運用 / 主体的学習 / 自律 / アーギュメント / 教師の関与 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、科学教育において注目されているアーギュメントを、国語科がめざす能動的な課題解決の学習(国語科単元学習)における言語運用プロセスの協働的解決の学習方略として導入することによって、学習者が自らの言語運用の質を精緻に捉え、自律的に学習を進めていくことができる協働的な学習プログラムを開発するものである。 当該年度は、最終年度としてこれまでに明らかになった知見を手がかりに、アーギュメントを内包した自律的な言語運用単元をデザインし、実践・検証(量的・質的)を行った結果、以下の4点が研究成果として焦点化された。それは、①国語科の文学の読解においては、自律的・協働的なアーギュメントを用いた解釈の反復によって、読みの深化が生起するということ②単元のプロセスにおいては、自律的・協働的なアーギュメントを成立・機能させるための教師の指導が必要になること③多様な解釈をアーギュメントを通して交流することによる文学作品の深い読みへの合意形成は、学習者のみで実現することは難しく、教材の価値性を熟知する教師の一定程度の介入によって導かれること④カリキュラムレベルでアーギュメントの経験を蓄積させることで、自律的に考えを更新しながら他者と協働で深い読みを創りあげていくことの良さを自覚する姿勢が学習者に涵養されること、の4点である。 一方、論点が明確な課題(AorB)ではない場合に、解釈の妥当性を協働で論じ合うことに大きな困難を生じること、日常の中で醸成されている学習者の関係性が、アーギュメントを用いた客観的・論理的な解決過程よりも優先される事例が一定程度生じること、学習指導要領に示された内容との齟齬が生じた際の教師の介入の判断のあり方、等に課題を残した。これらは、読解におけるアーギュメント活用の範囲と限界、自律的学習を実現する上での教師の役割と位置を検討することの不可欠性を意味するものである。
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