2021 Fiscal Year Research-status Report
Fact-finding Survey of Practical Cases Utilizing Teachers with Specialties other than Education from the Perspective of "School as a Team"
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21K02549
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
神内 聡 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90880302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | チームとしての学校 / 養護教諭 / 衛生管理者 / スクールカウンセラー / 学校医 / 過半数代表 / 社会人経験のある教員 / 多職種連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「チームとしての学校」や「令和の日本型学校教育」の理念として提唱されている、多様な専門性が協働する学校の在り方について、教育以外の専門性を有する教員を活用している実践事例を考察することで前述の理念を実現するために有用な知見を得ることを目的としている。 教育以外の専門性の活用に関しては、専ら教員の負担軽減の趣旨から外部人材に教育以外の専門性を委ねて「外部化」する事例を対象とした研究が行われているが、実際の学校現場では教職員は担当する教科教育以外の専門性を持ち合わせている人材も少なくなく、政策上も社会人経験を有する教員の採用が積極的に採用されている等、専門性を「内部化」する動きは明確に存在している。本研究はそのような専門性の「内部化」を実現する上で不可欠となる人材を研究対象とするものであるが、研究者自身も弁護士資格を有する教員として専門性の「内部化」に実験的に取り組んだ経験がある点で、他の研究には見られない特色を有する。 本研究が調査対象とする人材は、専門性を有する教職員、国家資格等を有する教職員、社会人経験者、特別免許状授与者等である。本年度は新型コロナウイルスの影響により、予定されていた調査はほとんど実施することができなかったが、その中で養護教諭、スクールカウンセラー、衛生委員会、衛生管理者、学校医・産業医、労務管理担当教員、労働者代表(過半数代表)に関しては部分的な調査を実施することができ、先行研究ではほとんど言及されていない知見を得ることができた。また、スクールカウンセラーの労働問題に関する調査に協力したり、国私立学校の労務管理の相談や助言を行う等、研究者の弁護士実務において本研究に関連した派生的な活動も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は新型コロナウイルスの影響により、予定していた実地調査やインタビュー調査のほとんどが実施できておらず、社会人経験を有する教員へのアンケート踏査等も実施できなかった。このため、計画を一部変更し、文献調査を中心的に実施する一方、実地調査を実施した事例に関してはできる限り参与観察してより実態的なデータを入手したり、他の研究とは異なる知見を得るために必要な調査を行った。また、研究者の弁護士実務において、スクールカウンセラーの労働問題に積極的に取り組み、労働組合のアンケート調査に協力したり、国私立学校の労務管理担当者や過半数代表者から労務管理等に関する相談を担当し、助言を行うことで、研究上の重要な知見を得た。 本年度に最も調査が進んだ対象事例として、私立学校における衛生委員会の調査がある。衛生委員会は労働安全衛生法で50人以上の教職員が勤務する学校に設置が義務付けられているが、これまで学校経営研究ではほとんど研究対象ではなかった。本研究では衛生委員会において専門性を有する教職員がどのように協働しているかを議事録等の記録資料、インタビュー調査、参与観察等によって検証した。具体的には、養護教諭、労務管理担当教員、労働者過半数代表等の教員であり、かつ担当教科指導以外の専門性を有している内部の人材と、学校医・産業医、スクールアドバイザー等の外部人材をそれぞれ対象に、専門性を相互理解し、協働する文化を構築する要素を認識する一方で、存在する課題についても発見した。 また、スクールカウンセラーの労働問題に関しては、雇用形態によって専門性を活用するスタンスが大きく異なる問題点を認識し、現状のスクールカウンセラーに関する先行研究が提唱するモデルと、実態及び実際にスクールカウンセラーを担当する人材が求めている状況にはかなり乖離があることが仮説として示されることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の重要な先行研究としては、教師文化・教員文化に関するものや、民間人校長等の人材に関するものがあるが、前者については学術的な議論が進んでいるものの、後者についてはあまり進んでおらず、とりわけ社会人経験を有する教員の研究はほとんど進んでいない。このため、現状では先行研究の検討も十分ではなく、国内だけでなく海外文献の収集が不可欠である。 また、専門性の「外部化」「内部化」という視点だけでなく、学校現場からの距離感・アクセス容易性等の視点も踏まえた考察も必要である。例えば、研究者自身が様々な形態のスクールロイヤー活動を実践しているが、特に困難な事例の解決に関しては学校設置者ではなく学校現場との関係性が大きく影響しており、外部人材の効果検証の際に重要な示唆であると考えている。 本研究では現時点で、民間人校長、養護教諭出身の校長、社会人経験を有する教員、特別免許状授与者、弁護士・看護師・臨床心理士・社会福祉士・衛生管理者の各資格を有する教員、労働者過半数代表、労務担当・ICT担当の教員等に対するインタビュー調査と質問紙調査を実施し、教育効果及び教師文化への影響を測定することで「チームとしての学校」が掲げる協働の文化の実態を明らかにしていく予定だが、その際にはm-GTA、TEA、エスノメソドロジー、アクション・リサーチ、エスノグラフィー、専門職の学習共同体(PLC)等の概念や分析手法の活用を試みたい。 本研究ではアメリカのチーム対応の実態についても実地調査を予定している。アメリカでは外部人材を学校に常駐する形態が多く、中でも本研究は日本の学校では見られないシステムとしてSRO(スクール・リソース・オフィサー)に注目している。そうしたアメリカの事例も参照に、チーム対応において専門性を有する人材をどのように活用すべきか、幅広く知見を得たい。
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Causes of Carryover |
本年度は新型コロナウイルスの影響で予定していた出張調査のほとんどが中止又は延期になり、調査費用として計上していた研究費が執行できなかった。このため、次年度に延期したほとんどの出張調査について、次年度の研究費を使用する予定である。
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