2022 Fiscal Year Research-status Report
Fact-finding Survey of Practical Cases Utilizing Teachers with Specialties other than Education from the Perspective of "School as a Team"
Project/Area Number |
21K02549
|
Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
神内 聡 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90880302)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | チームとしての学校 / スクールカウンセラー / スクールロイヤー / スクールリソースオフィサー / 社会人経験のある教員 / 看護師免許を有する養護教諭 / 衛生管理者 / 労働者の過半数代表 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「チームとしての学校」や「令和の日本型学校教育」の理念として提唱されている、多様な専門性が協働する学校の在り方について、教育以外の専門性を有する教員を活用している実践事例を考察することで前述の理念を実現するために有用な知見を得ることを目的としている。教育以外の専門性の活用に関しては、専ら教員の負担軽減の趣旨から外部人材に教育以外の専門性を委ねて「外部化」する政策が推進されているが、専門性を「内部化」する動きも政策上で示されており、2022年12月に発表された中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」では、教師として勤務する民間企業等の勤務経験者の増加による教職員集団の多様性の向上や、特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・採用・研修の必要性が示されている。本研究はまさに同答申を先取りした内容になっており、かつ同答申が掲げる政策を裏付けるエビデンスを示す使命を負っていると言える。 本研究は国家資格等を有する教職員、社会人経験者、特別免許状授与者等の教員を調査対象としており、現在は看護師免許を有する養護教諭、臨床心理士資格を有する教員、社会人経験のある教員を重点的に調査している。また、衛生委員会やいじめ・生徒指導に関する校務活動を調査することで、内部人材と外部人材の専門性がどのように連携しているかも調査対象としている。また、研究者自身も弁護士資格を有する教員としての経験があり、学校法務の専門性を有する教員を分析対象としている点も重要である。本研究は「多様な専門性を有する質の高い教職員集団」が子どもへ与える影響について知見を示すことを目指している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は大半の時期において新型コロナウイルスの影響により予定していた実地調査やインタビュー調査のほとんどが実施できず、計画を一部変更して文献調査とできる範囲での実地調査を行った。 成果物としては、教員の労務管理に関する専門性の著作と、いじめ対応に関する専門性に関する論文の2つが重要であり、前者については学校の働き方改革や労務管理に関する実務書(共著)を刊行し、後者についてはいじめ対応における学校警察連携に関する紀要論文を執筆している。前者に関しては、本研究において実施した学校の労務管理担当者、教職員組合・労働者代表、衛生管理者へのインタビュー調査や、衛生委員会の参与観察などを通して得られた知見を実務書として実際の学校現場で役立てるようにまとめている。後者に関しては、アメリカのSRO(スクールリソースオフィサー)に焦点を当てて、学校における警察業務の内部化の先行事例を紹介した。 また、臨床心理士資格を有する教員への調査では、心理の専門性を有する教員を学校で活用するには様々な課題が存在することが明らかになり、中央教育審議会答申で奨励されている専門性を有する教員の導入に関しては実務上の課題が現実に存在していることが示唆される。社会人経験を有する教員に関しても調査を継続しており、教員と他の職業の比較考察を進めている。 現在進行中の調査対象の教員としては、民間人校長、養護教諭出身の校長、社会人経験を有する教員、特別免許状授与者、弁護士・看護師・臨床心理士・社会福祉士・衛生管理者の各資格を有する教員、労働者過半数代表、労務担当・ICT担当の教員等であり、研究手法としてはインタビュー調査を中心にm-GTA、アクション・リサーチ、エスノグラフィー、専門職の学習共同体(PLC)等の概念や分析手法の活用を試みる予定である。また、研究者自身の実体験に関してもオートエスノグラフィーの手法を用いて分析したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は社会人経験者や国家資格保有者等の専門性を有する教員に焦点を当てた研究であり、2022年12月に発表された中央教育審議会答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について~「新たな教師の学びの姿」の実現と、多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成~」で示されている、教師として勤務する民間企業等の勤務経験者の増加による教職員集団の多様性の向上や、特定分野に強みや専門性を持った教師の養成・採用・研修の必要性と極めて密接に関連するものだが、本研究が計画・開始された時点では同答申はまだ発表されていなかった。しかし、現時点では本研究で示したい知見は答申をはじめ今後の教育政策の重要な内容として位置付けられているとともに、本研究は教育政策に先行する形で計画・開始されたものであり、先駆的なエビデンスを示すことが期待されていると考えられる。 専門性の内部化に関してはスクールカウンセラーの常勤化が政策上も奨励されていることとを相俟って効果を検証した研究が現れている。しかし本研究に付随して実施したスクールカウンセラーに関するアンケート調査では、大半のスクールカウンセラーが常勤化を希望していないという結果が示されている等、専門性の内部化を進める上では無視できない当事者の意識も存在している。本研究は研究者自身も弁護士資格を有する教員として当事者の立場を有していることから、当事者の視点を直視した政策上の提言を研究においても示していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本年度も大半の期間で新型コロナウイルスの影響で予定していた出張調査のほとんどが中止又は延期になり、調査費用として計上していた研究費が執行できなかった。また、調査対象となる教員の都合で調査を中止せざるを得ない場合もあった。このため、次年度に延期したほとんどの出張調査について、次年度の研究費を使用する予定である。
|