2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K02551
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉冨 健一 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (00437576)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 移動観測 / Webアプリケーション / Leaflet / 地理院地図 / GIGAスクール構想 / ChromeBook / iPad |
Outline of Annual Research Achievements |
気象学習あるいは環境学習の一環として移動観測を行い,取得した観測データを整理し傾向を読み取るためには,取得した気温の情報と,取得した場所の位置情報を取得時刻をキーとしてマージしてから,地形図などの地図上に表示する必要がある。研究の初年度は,GPXファイルから緯度経度と,日本標準時へと修正した時刻の情報だけを抽出してCSVファイルとして変換・保存可能なインストール不要の無料Webアプリケーションの公開を行った。 このWebアプリケーションにより,取得した観測データは,容易に集計可能な状態とすることができるようになったものの,これらを地図上にプロットし,視覚化するためには,従来は,GIS(地理情報システム)を用いる必要があった。 特に学校現場で用いられることが多いQGISは,クロスプラットフォームのソフトウェアとはいえWindowsやMacなどのPCでしか利用できず,近年,文部科学省が進めている,小中高等学校で1人1台の端末を利用可能にする「GIGAスクール構想」で多く導入されているChromeBookやiPadのような,Windows以外のプラットフォームで動作させることができない。 以上の経緯から研究二年目は,特定のOSやプラットフォームによらないツールとして,Webブラウザを用いて移動観測で得られた観測データを地図上に視覚化するWebアプリケーションの開発を行った。本年度開発を行ったWebアプリケーションはLeafletと呼ばれる,Web地図サービスで広く使われるオープンソースのJavaScriptライブラリを用いたもので,前年度開発を行ったGPXファイルから緯度経度と,時刻の情報を抽出したCSVファイルを読み込むことで,国土地理院が,地理院地図として地形図や空中写真などの公開を行っているWeb地図上に,観測データをプロットすることが可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生実習等で実際に移動観測を実施すると,観測の行為そのものよりも,その後のデータ整理の方に膨大な時間を要するという現状がある。データ整理として,温度計から得られた気温情報のログや,スマートフォンから得られる緯度経度の情報等を機器から吸い出した後に,どこの地点が何度だったか,という記録としてまとめる作業や,出来上がった気温と場所の記録を地図上にプロットして可視化する作業の方に膨大な手間がかかる。 実際,大学院の授業および,グローバルサイエンスキャンパス広島における高大連携プロジェクトの一環として,広島市内の高校生と連携して移動観測を行った際に,学校現場での端末室の端末へのインストール制限や,学生の持つ端末の種類によって,QGISをインストールできない状況が発生した。 そこで研究の二年目は,特定のOSやプラットフォームによらないツールとして,Webブラウザを用いて移動観測で得られた観測データを地図上に視覚化するWebアプリケーションの開発を行った。これはLeafletと呼ばれる,Web地図サービスで広く使われるオープンソースのJavaScriptライブラリを用いたもので,前年度開発を行ったGPXファイルから緯度経度と,時刻の情報を抽出したCSVファイルを読み込むことで,国土地理院が,地理院地図として地形図や空中写真などの公開を行っているウェブ地図上に,簡単に観測データをプロット可能なインストール不要の無料Webアプリケーションである。
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Strategy for Future Research Activity |
目指すところは,中学生や高校生が気象学習の一環として,移動観測を行う際に,ソフトウェアの知識がなくても,幅広いプラットフォームで結果を集計し,気温の二次元分布に変化が生じる原因について,仮説を立てたり,検証を行ったりの活動をOSの種類などの制限無く,かつ容易に行えるようにすることである。 多地点における気温観測から得られる局地気温分布は,比較的容易にその特徴を捉えやすく,中学生にとっても探究しやすい現象であるといえる。公園緑地のクールアイランド(大鹿,1992)などが挙げられる.これらの先行研究では,気温分布を観測するための手法として,いずれも移動観測を用いている. 初年度および二年目の研究開発において,おおよそソフトウェア的な障壁をクリアすることができたと考える。ただ,ソフトウェアが全て自動で処理を行ってしまうようになると,観測データの集計部分がブラックボックス化してしまい,いったい何を目指して活動しているのかわからなくなってしまう恐れがある。 研究の最終年度は,開発を行ってきたソフトウェア群を実際に使用して学生実習等で移動観測を行ってもらい,様々な環境における動作の確実性を確認するとともに,システムがサポートすべき範囲と,観測者が自分で手を動かして検討を行うべき内容について整理し,移動観測用のツールとして,より利便性が高くなるよう改良を加えていく。
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Causes of Carryover |
端数となる少額の残額が発生したが,無理に執行せず翌年に利用することとしたため。 三年目となる今年度は,計画通りWebで公開中のコンテンツの使い勝手の向上を図るため,画像や動画編集用ソフトウェアの購入を予定している。
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