2023 Fiscal Year Research-status Report
特別活動によるいじめ未然防止プログラムの開発研究-学級活動で培う人間関係の構築-
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21K02552
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
松岡 敬興 近畿大学, 工学部, 教授 (10510539)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 特別活動 / ガイダンス / いじめ / 学級活動 / 人間関係 / 自己理解・他者理解 / 共感性 / 自己開示 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自死やいじめの未然防止をめざして、生徒どうしを繋ぐためのガイダンスプログラムを開発し、学級活動の時間において授業実践を行う。複数時間扱いの実践はもとより、自尊感情の変容を見取るためにアンケートを実施する。教育効果については、全ての生徒を対象にし、数値データによる量的分析、自由記述による質的分析の両面から考察する。授業実践が学級経営に寄与するうえで、年間を見据えつつ意図的・計画的に各取組を配し、生徒どうしが関わり合える機会と場を保障することで、自己理解・他者理解を深める。望ましい人間関係の構築を図るうえで、相互理解を促すためにガイダンスプログラムを展開し、生徒への変容効果について分析・検討を加える。また授業実践の後、取組の内容について不具合等の気づきを出し合い、更に改善を加える。 本年度は3年次の計画に則り、1年次及び2年次における研究の成果を反映させた改善プランをもとに、研究協力校において授業実践に取り組んだ。改めて年間を見据えながら各学期ごとに取組を配し、その実施の事前事後において、「自尊感情尺度(東京都版)」を実施した。また取組を通して、生徒一人一人の気づきについて、自由記述に着目して分析・検討を加えた。 中でも6月に実施した全ての生徒を一会場に集めて取り組んだ全校学活では、異年齢集団活動として他学年の気づきや学びを互いに共有できた。また自己理解・他者理解を深めつつ、多様なものの見方や考え方に触れたことで自尊感情を高めることに繋がった。ペアで相手の顔を描いたり、グループで協働して大判画を制作したり、キャラクターの良さを探し互いに共有する構成的グループ・エンカウンターの取組は、生徒相互間で様々な気づきをもたらし、信頼関係を構築するうえで効果的であった。年間を見据えてガイダンスプログラムを展開することで、生徒の成長・発達を支援し促進させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで本研究を進めるにあたり、1年次(2021年)と2年次(2022年)においては新型コロナウィルス感染症による影響は避けられず、学校現場での授業実践等の受け入れが認められず計画の変更を余儀なくされた。ようやく3年次(2023年)より、研究協力校(公立中学校)と密に連携を図り、年間を見据えながら意図的・計画的にガイダンスプログラムを実施することができた。主に以下4点を取りあげて、①望ましい人間関係の構築を図りつつ、生徒一人一人の成長・発達を促すこと、②学期毎に人間関係づくりの授業実践を行い学級経営を支援すること、③指導者が生徒一人一人への生徒理解を促すためのアンケート『自尊感情尺度(東京都版)』及び『教育相談のための綜合調査Σ』を実施、④指導者と学級経営に関わる意見交換を図り、見取りのズレに着目し学級経営に見られる諸問題の解決に向けて議論を進めた。 本年度は、2年次の研究成果を生かした改善プログラムを作成し、①適切に年間計画に位置付けるうえで実施時期の検討、②プログラムによる生徒一人一人への教育効果の測定及び検討・分析のためのアンケートの実施、③学級経営に寄与するより望ましいプログラムの構築を目指す改善プログラムの作成、④指導者による正確な生徒理解を踏まえた対応ができる力量の育成、⑤学校行事や生徒会活動、特別の教科道徳との連動化、に主眼を置いて研究を進めた。 プログラムを学級経営に生かすうえで、如何にして授業実践を通して生徒に汎用的能力として共感性を育むのか、そこには体験活動が鍵を握るものと考え、指導者との共通理解を図るために十分な時間を確保した。指導者との事前打ち合わせ、実践(研究者が授業を行う)当日の動きや支援体制、授業実践前後に行うアンケート、生徒理解を図るための学期毎のアンケートなど、管理職はもとより教務主任、研究主任らとの丁寧な連絡調整が本研究の成果と直結する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において年間を通した授業実践を、概ね3年次において実施できた。但し本来2年次の計画内容を、3年次に持ち越して実施している。そこで4年次においても、引き続きこれまでの研究成果を踏まえ、研究協力校の子どもの実態を正確に把握するとともに、ガイダンスプログラムに関わる要請内容を尊重しながら授業実践、子どもを対象にしたアンケート調査、指導者への聞き取り調査を行う。加えてプログラムを遂行するにあたり、管理職、教務主任、研究主任らとの綿密な打ち合わせを行い、事前準備、取組の意図や授業実践の進め方、それがもたらす教育効果、事後指導について共通理解を図る。 研究協力者(小学校1名、中学校1名)と適宜、意見交換を図り、学級の実態を踏まえながら、学級経営上の要請とプログラム実施との整合性を見極め、必要なタイミングで授業実践を組み入れる。プログラムと学校行事や生徒会活動などの諸活動とを連動させることで、子どもが抱く共感性に関わる自己理解・他者理解を深め、引いては自尊感情を高める。その教育効果については、『自尊感情尺度(東京都版)』、『教育相談のための綜合調査Σ』を用いて分析・検討し考察する。 本プログラムがもたらす教育効果について、教員研修の場で研究協力者からの報告をもとに、成果と課題をもとにその意義を問う全体研修会を行う。各学級の子どもの実態は異なるが、指導者が彼らを支援するうえで、学級経営の視点に立ち、生徒理解に基づく授業実践や生徒とのかかわりについて、指導者による観察の見極めを出し合い、具体的な手だてと見通しについて議論を深める。 本年度が研究最終年度にあたり、これまで研究協力校において取り組んできた内容をもとに、ガイダンスプログラムによる学校経営がもたらす教育効果について整理する。プログラムの可能性と限界について言及し、教職員の意識としてその必要性に沿って支援することが重要である。
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Causes of Carryover |
本研究の3年次では、研究協力校(公立小学校1校、公立中学校1校)において、年間を通した授業実践を計画通りに遂行できた。しかし、1年次及び2年次における本研究の取組については、感染症の影響により大幅に遅延を余儀なくされた。そこで元来3年次に取り組む計画内容を、最終年次においても研究協力校で実施する。ガイダンスプログラムによる授業実践などに関わる各種データ、指導者(学級担任)からの聞き取り、心理検査に基づく量的分析を統計ソフトSPSSを用いて、主としてクロス集計、t検定を行い、分析・検討する。 同時に、研究内容の整理、考察、まとめについてもツートラックで進める。また、研究成果の発表の機会として、教職員を対象に、学級経営に関わる研修会を催し、研究協力者からの報告内容を踏まえた議論の場を提供する。さらに研究成果と課題に関わる報告書を作成し、より多くの教員の皆さまに配布することで、ガイダンスプログラムの有効性についての理解を図る。 なお本研究の成果と課題をまとめるにあたり、より一層、多面的・多角的な視点から考察を深める。そこで先行研究に関わる論文や報告書、学校現場における実践研究報告書、関連図書、関係資料など、定期的に国立国会図書館関西館にて文献調査に取り組み、自死やいじめ問題の現状を正確に捉え、包括的にガイダンスプログラムの可能性と限界について、実践データを踏まえつつ考察を加えて整理する。
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