2021 Fiscal Year Research-status Report
生徒の多様性尊重の学習共同体を組織する国語科教師の学習指導観変容プロセスの解明
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21K02575
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
丸山 範高 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50412325)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 教師の学習 / 文学教育 / 教師の語り / 教師の信念 / 文学の解釈の多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
文化的背景の多様な生徒同士が相互主体的に交流する国語科授業を組織する教師の学習指導観の変容プロセスの解明という研究目的にしたがい、2021年度は、①国際バカロレア・ディプロマ・プログラムにおける文学の授業を実践する国語科教師を対象とする調査(授業観察とそれに基づくインタビュー)を行い、生徒の多様性を尊重した授業実践の背景をなす教師の信念を聞き取った。さらに、②調査結果としてのデータである教師の語りの適切な質的分析方法について検討した。 複数の国語科教師を対象とする調査を行った結果、次の2点が教師間の共通事項として語られた。文学の授業において生徒の多様性(多様な解釈)を尊重するために重要なことは、①個々の生徒の多様な言語能力に寄り添った個別的な教育的示唆(解釈の提示ではない)を行うこと、②文学作品に描かれた世界の多面性を読み取る手がかりとなる文中表現への注視を促すこと、である。 インタビューによって引き出された教師の語りは、個々の教師固有の実践の文脈を読み解く一方で、文化的に同質な生徒を対象とする従来の授業実践におけるものとは異なる教師の学習指導観の傾向性について、複数教師間における共通性を解明する必要もある。これらの課題を解明するために、先行研究のレビューにより、研究方法論としてナラティヴ・アプローチが妥当であると判断した。教師によって語られた内容(何が語られたか)を分析することにより教師間における共通性を解明するとともに、個々の教師固有の語りの組織方法(どう語られたか)を分析することで教師ごとの固有性を読み解くこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により、当初予定していた数の事例調査(現地での対面調査)を行うことができなかった。しかしながら、ナラティヴ・アプローチやM-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)等、データの質的分析方法について先行研究を幅広くレビューする時間を確保できたため、社会的相互作用を経験する教師の学習指導に関わる信念分析についての方法論的枠組みを構築する目途が立った。本研究で対象とする事例は、教師自身にとって被教育経験のない環境での授業実践を対象としたものであるため、実践に伴って肯定的感情のみならず葛藤その他の多様な感情が交錯する経験となっている。したがって、そのデータの適切な分析方法については、先行研究に基づいて丁寧に検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の研究計画は、調査事例を増やすこと、そして、研究成果の一部について学会発表の準備である。2021年度は国際バカロレア・カリキュラム実施校での調査(ディプロマ・プログラムにおける文学の授業を実践する国語科教師)に偏っていたため、2022年度は外国につながる生徒を指導する国語科教師の調査事例の増強を計画の中心としている。また、調査実施後は、音声データをできる限り速やかに文字化し、適切な質的分析方法を見極めつつ、教師の学習指導観変容プロセスについて複数教師間での共通性と教師ごとの固有性を解明する予定である。分析結果は、全国規模での学会での口頭発表を計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大により、予定数の現地調査を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、調査数を増やすことで計画的な予算執行に努める予定である。
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