2023 Fiscal Year Research-status Report
中等・高等教育において青年が親となるための教育をどのように構築するか
Project/Area Number |
21K02577
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
今川 真治 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (00211756)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
権田 あずさ 広島都市学園大学, 子ども教育学部, 准教授(移行) (40710851)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 親準備性 / 大学の授業科目 / シラバス分析 / 家庭科教員養成課程 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年までの準備的調査の結果,全国の大学において,青年が親になるための親準備性に関わり,親準備性を育む可能性がある科目提供の例は極めて少なく,青年が将来の家庭展望や家族のあり方を考える機会を与える学びの場が提供されていないことが明らかとなった。そのような中で,中等教育の学習指導要領との関連において,恋愛や結婚,家族や子育て等の内容に触れることが求められる教科として,家庭科の役割が改めて浮き彫りとなった。このことから今年度は,全国の国公私立大学の中で,高等学校一種免許状(家庭)が取得可能な大学,学部,学科を抽出し,それらの機関において,恋愛,結婚,親準備性に係わる授業科目がどの程度提供されているかについて分析を行った。 予備調査をもとに,大学の授業科目の中で親準備性に係わると考えられるキーワードとして,恋愛,配偶者選択,結婚,離婚,家族,妊娠,出産,子育て,育児不安,親子関係,ジェンダー,男女平等の12のキーワードを用いた。またこれに,親準備性に直接関わると考えられる「親になる」というキーワードを加え,関係科目のシラバス内で,これらのキーワードがどの程度出現し,またどのような文脈で使用されているかについても分析を行った。 本研究課題と関連させて実施している広島大学附属幼稚園の保護者を対象とした弁当製作に関する研究について,その成果の一部を2023年8月にマレーシアのクアラルンプールで開催された第21回アジア家政学会大会(ARAHE)で発表した。この研究では,幼児を育てている母親や父親が,食を通して親の愛情を子どもに伝えているかをテーマに据えており,親準備性に係わる本研究課題の一部を成している。代表者は,この研究で得られた資料や知見を大学の授業科目に取り入れ,大学生が将来,配偶者選択や子育てにどのように向き合うかについて考察させるなど, 青年の親準備性を育む実践を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の副テーマである,幼稚園における幼児を持つ保護者の弁当製作を含む食を通した愛情表出に関する意識と行動については,これまで多くの学会で発表の機会を持ち,その成果を公表してきた。しかしその一方で,研究の主テーマである親準備性に関わる高等教育における教育の現状については,データの収集はほぼ終了しているものの,結果の報告が遅れているのが現状であり,今後は研究成果の報告に尽力しなくてはならない。
|
Strategy for Future Research Activity |
全国の国公私立大学のうち,中等家庭科教員の養成課程を持つ学部や学科において提供されている親準備性を育む科目の分析結果について,2024年6月にアイルランドのゴールウェイで開催される第25回国際家政学会(IFHE)で報告を行うとともに,各国で同様の研究をしている研究者と意見交換をすることなどを通じて,世界的に大きな問題となっている少子化に対して,親準備性教育がどのような効果を持つのかについて検討する。また,これまでの学会発表の成果等をまとめ,国内外の学会誌等に投稿することにより,学界をはじめとする社会に成果を還元することを目標とする。
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画において,研究期間中に3回の国際学会での発表を予定しており,それに合わせて各国におけるデータ収集を予定していた一方で,コロナの影響により,国際学会の開催日程が変更になったことなどがあり,海外でのデータ収集と研究成果の発表機会を十分に得ることができなかった。2024年6月に,国際家政学会(IFHE)の大会が開催予定であることから,前年度までに消化できなかった研究費を使用することにより,同学会で研究成果を報告する予定である。なお,同学会における研究発表については既に審査を通過している。
|