2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K02581
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中城 満 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (80610956)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 理科問題解決学習過程 / 課題の型 / 原理追究 / 活動目的 / 型ごとの指導法 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたり、主に研究対象とする理科授業実践記録の収集に努めた。そして、本研究仮説に基づき、収集した授業記録をプロットデータ化した上で「原理追究型」「活動目的型」「その他」に分類した。 本研究が設定している「適切な個別と普遍の移行」とは、具体的には「原理追究型」においては、「仮説を検証するための方法が適切に設定されているか」、「活動目的型」においては、「導かれた結果から適切に結論の導出ができてているか」である。上記分類の結果から、「原理追究型」の方が「活動目的型」より、適切に問題解決過程が成立しやすいことが推察された。その主な要因としては、前者の方が児童生徒の「問題解決過程における見通し」を持たせやすいことが考えられる。しかし、適切に方法が設定されていた事例においても、問題解決過程の中で一貫して扱われておらず、混乱を生じる場面がみられたり、その方法が十分児童生徒に伝わらなかったりして、結論付けまで至らなかった事例も見受けられた。以上のことから、問題設定の型ごとの特徴やその適切な方法の採用だけでなく、これらの指導的意図が授業の流れ全体において指導者に意識付けできていなければならないことが示唆された。 上記、本研究の分析における成果とその関連する成果は、日本科学教育学会四国支部研究会において3件、日本理科教育学会四国支部大会において4件発表され、その妥当性を検討する場を得た。 今後は、以上の点を踏まえ、さらなる類型化の可能性を探ると共に、「原理追究型」「活動目的型」それぞれの特性とその指導の適切な在り方を明確にしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究に関連する授業記録実践事例を2021年度内に21件収集することができた。これらの授業内容、その授業で使用された指導案を分析し、本研究における問題設定の「型」のいずれかに分類することができた。これらの分析と分類から、その問題設定における問題解決過程の成立のための条件がさらに詳細にわかった。 それは、例えば、「真理追究型」の授業構成においては、「仮説」に基づく「検証方法」が明示されなければならないが、それだけでは、問題解決過程が成立できない事例が複数見られたことである。具体的には、「検証方法」は明確に明示されていたが、この方法に基づいて得られた「結果」をどのように「仮説」の証明に結びつけるか、といった内容の不十分さによるものだった。このことから、授業者にもともめられるのは「検証方法」を明示するだけではなく、改めて「仮説」に立ち返ることの重要性も認識しておかなければならいということである。この問題は、研究代表者の主張する「個別と普遍の区別」に対する授業者の深い認識を必要とするものであることが考えられる。この考察は本研究における次の視点に示唆を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに授業記録を蓄積するとともに、その分類と特性をさらに明らかにする。その際、必要なら分類の「型」のカテゴリーを見直し、新たな「型」の設定を模索したい。また、理科学習指導における領域ごとの内容と分類の「型」との関連性を探る。研究仮説としては、「エネルギー」「粒子」領域における学習内容では、「仮説」の立案が容易であることから「原理追究型」の問題設定が多くなる傾向があると考えられる。一方、「生命」「地球」領域においては、継続観察や試行活動が取り入れられる場合があることなどから「活動目的型」の問題設定が多くなることが考えられる。ただし、これは一元的なものではなく、相互に採用される可能性は考えられる。いずれにしても、各領域と問題設定の関連性が明確になれば、理科授業構成の有効な視点として働くことが考えられる。 これらの分析結果は、学会等での発表、紀要での論文化等を通して、明示していきたいと考えている。
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