2023 Fiscal Year Research-status Report
学校における「いじめ対策委員会」をめぐる多職種連携の実証的研究
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21K02589
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
鈴木 庸裕 日本福祉大学, 教育・心理学部, 教授 (70226538)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 学校福祉 / 多職種協働 / いじめ防止対策推進法 / いじめ防止対策委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いじめ防止対策推進法の実効性を学校内での実践において高めるために、教師が他職種とともに校内でのいじめ防止対策をめぐる調査や事後の改善対応、予防対策のための行動指針と実践方法を、実証的な研究によって明らかにすることである。 その目途において、2023年度は、教育委員会指導主事や名古屋、東京、福島、宮城、静岡、広島、島根、熊本、三重、香川、大分などのスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、弁護士などからの聴き取り、継続的にアンケート、研究協議をおこなってきた。これらを通じて『学校でのいじめ予防のための調査ガイドブック』の構想を明らかにした。 特に日常的な多職種連携であるいじめ対策委員会への参与観察や資料収集を通じて、これまで学校教育において継続的実効的に協働する体制組織や指針を持たなかった教育職と心理職・福祉職・医療職・司法関係者がチームとなることの行動基準を探る中で、調査をめぐる「事実認定の三段論法」をめぐるアセスメントの差異、そして権利擁護と教育活動との関係性把握の差異などが明らかになった。特に、司法関係者には事実認定とその評価をめぐり、その両者の関係の「間」が狭いこと、その「間」をいかに心理職や福祉職と拡充した議論ができるかが課題となる。 近年、被害者からの過度な申し立てやいじめ問題調査と訴訟が並走するなど、本来の調査活動を進めていく上で、困難な事例も増えている。 したがって、教育の専門性をいかに担保するかが今後の課題となる。これらは、いじめに関わる他職種の連携を具体化する実践的観点になることが浮かび上がってきた。子どもの最善の利益を担保するうえで、日々の教育実践と重大事態調査の活動とを切り離さない、いじめ問題調査の「教育実践論」の創出とそのガイドラインなどを早急に作り上げていくことが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この調査を通じて、学校での組織的な活動を進めるための『学校でのいじめ予防のための調査ハンドブック』(モニタリング用試案)を作成し、協力校や教育委員会からの修正意見の聴取や調査をおこない、上記の『ハンドブック』の完成と活用をおこなった。 2023年度(3年目)は、これまでの国内外の文献的調査を元に調査の観点や項目を精査し、協力校・専門職団体、専門職個人への質問紙調査と聴き取り調査より得た現状や意見の分析・考察を通じ、上記『ハンドブック』(モニタリング用試案)の冊子の試行的な活用とそのモニタリング、そしてその聞き取りや協議を行うことができた。2022年度から継続してこの活動を通じて、3年目は数回の振り返りの機会をもちながら再度、確認していくことを行った。 こうした研究の成果について、学術誌や教育誌等で数多く報告することができた。『学校福祉実践論』(ミネルヴァ書房)の刊行も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、1年延長を申請し、2024年度(4年目)は、2023年度の当初最終年度に達成できなかった事柄を継続する。 最終年度として、研究協力を得た各都道府県の教育委員会や諸学校、諸専門職団体への報告を目途とした研修会や協力を得た諸学校での教職員研修を実施し、それらの成果を日本学校ソーシャルワーク学会や日本生活指導学会などで本研究成果の発表を行うなど、関係学会や研究会、都道府県の弁護士会などでで口頭発表や論文投稿、研究機関への報告書等の執筆・作成を継続して行う予定である。 いじめ防止対策と子どもの権利に関する著書の執筆活動などを通じて、本科研の成果を世に問う予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度に実施できなかった、口頭発表や報告書の作成とその実施のため。
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