2021 Fiscal Year Research-status Report
日仏の予防キャリア問題教育における教科間連携の動向分析とカリキュラム開発
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21K02597
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
上里 京子 群馬大学, 教育学部, 教授 (80202448)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 予防キャリア問題教育 / カリキュラム構成 / カリキュラム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日仏の予防キャリア問題教育に関する教科間の連携構造と内容の最新動向を分析し、カリキュラム開発を行うことを目的とする。 初年度は研究方法論の検討と、フランスの予防キャリア教育の中心である「予防・健康・環境(PSE)」科の最新プログラム(2019年)を分析した。 プログラムの序文において、この教科の目的は、生徒に①予防、健康、環境に関する知識、②様々な方法に基づく分析的アプローチ、③科学の教養や、科学的事実と先入観に基づく考えを区別して批判的なセンスを発揮し、良識ある選択を行う力、④自身と他者を尊重しつつ社会に適応する社会的な能力と公民としての能力、⑤自己の健康及び環境に対する責任ある行動力を習得させ、自己の環境とりわけ職場環境において予防を意識する責任ある個人を育成することである、と明示している。また、PSE教育の目標は、A自己の健康資本に責任を持つ個人、B自己の環境で責任ある行動を取る個人、C職場環境での予防を担う個人、の3大テーマを軸にしたモジュールとして構成されている。こうしたアプローチによって学んだことが確実に定着し、企業研修などの実地経験で身につく新たな概念とともに深められる学習プロセスが示され、科学的教養の発展が企図されている。さらに、客観的な科学的事実と科学文献の分析をもとに、統計に由来する定量データに裏付けられた主張を展開できるように指導すること、職業リスク予防の包括的な理解を図ること、他の分野の教育との様々な形での連携を推奨している。 一般的に、科学教育はアナリシス(分析)、生活教育はシンセシス(総合)が中心であるが、この教科では、現在およびこれから起こる可能性のあるキャリア問題を分析し、修得した知識や公民としての能力、行動力、科学の方法論を用いて、問題解決と予防を図ることに総合できる系統的かつ実践的なカリキュラムが編成されている点が特徴的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は主に「予防・健康・環境」科の最新のプログラムの分析を進めることができた。プログラムの序文には、この教科が、健康、労働、環境の分野において国家および欧州計画によって定義された優先的な教育活動と予防活動に十分に寄与するものとし、生涯にわたる職業教育の一環として、非常に多様な公衆を対象としていることを明示しており、欧州連合全体が、生涯にわたる職業教育や、健康・労働・環境に関わる問題解決と予防教育を強力に推進していることが確認できた。 この教科をはじめ予防キャリア問題教育に関わる教科や教育課程のあり方についての議論が多様化しているが、2020年1月以降は新型コロナウイルス対策のため、国外での資料調査や研究者へのインタビュー調査等ができない状況が続いており、やや遅れている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の方法論に基づき、職業リセの教養教育科目「予防・健康・環境」科を中心として、初等教育の「科学・技術(sciences et Technologie)」科、コレージュの「技術 (Technologie)」科における予防キャリア問題教育に関する内容の科学的概念と生活概念の関係性について、最新プログラムと教科書の分析を通して明らかにする。 さらに、キャリア問題は、生き方モデルとしての親の教育力の低下問題の影響が大きいことから、親準備教育としての「ライフキャリア教育」に対応した「公民科」や、2015年にフランスの教育課程に新設された「モラル教育」等との教科間連携の構造と内容を分析する。 本研究の推進方策として、教育内容における科学的概念と、子どもの生活概念を関連づける方法論に焦点を当てて分析することにより、日本の小・中・高等学校の家庭科教育における予防キャリア問題教育のカリキュラムの構造化に有効な示唆を得ることができると考える。 また、フランスの予防キャリア問題教育に関わる各教科においては、教育課程を貫く「科学」に基礎をおいた科学教育という基本理念のもと、フランス独自の科学の認識論による科学的概念によってカリキュラム開発が進められていることが推察できるが、この点を踏まえて比較分析することで、日本の家庭科教育を中心とした予防キャリア問題教育における独自の科学的概念を「市民生活リテラシー」として構築し、それを基盤としたカリキュラム開発を推進できると考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)フランス現地での資料調査や研究者へのインタビュー調査等については、2020年1月以降、新型コロナウイルス対策のため、渡航が不可能となり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)新型コロナウイルスが終息に向かい、次年度に、外国出張が可能になった暁には、フランスや国際学会開催国への渡航を計画し、資料調査及び情報収集等を行う予定である。
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