2022 Fiscal Year Research-status Report
Examination of Practical Knowledge and Teaching Methods for Students with Psychological Problems in Regular Classes
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21K02612
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
土屋 弥生 日本大学, 文理学部, 准教授 (80822246)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現象学的教育学 / 人間学的教育学 / 現象学的な発生的分析 / 発達障害 / 不登校 / 指導方法 / 実践知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、学校教育現場における多様な課題や問題を抱える児童生徒に対する効果的な指導・対応の方法について、実際の教育現場での指導実践に役に立つ実践知を現象学的・人間学的な立場から明らかにし、それを用いた指導方法を実際の教育現場で起こり得る指導場面の事例分析を通して構築し、教育現場に寄与することにある。 令和4年度は、令和3年度に明らかにされた教育現場における実践知を基盤とし、具体的な生徒指導について、心理学的・医学的知見との比較を加えながら現象学的・人間学的な立場から捉え直し、新たな指導方法を導き出すことを試みた。 まず、自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある児童生徒に対する現象学的な発生的分析の方法を用いた新たな指導方法について検討した。令和3年度の研究成果を踏まえ、ASDの児童生徒の指導においては、ASDの児童生徒が歩むことができる「道」を想起し、この「道」を構成するさまざまな「意味」の連関を現象学的な発生的分析の方法を用いてASDの児童生徒が迂回して歩むことのできる「回り道」を考案するという、指導方法構築のための手順と枠組みを具体的に提示することができた。 また、不登校児童生徒の指導の方法に関する現象学的人間学的な考察をおこない、不登校の児童生徒の指導方法の枠組みとして、「児童生徒の観察」、「児童生徒との交信」、「児童生徒行動・心情の代行的な把握」、「指導計画の作成と介入時期の判断」といった指導上重要となる視点を取り出すことができた。これらの指導視点は、個々に状況の異なる不登校児童生徒の指導実践において、具体的な指導方法を構築するための重要な手がかりとなると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の研究計画に基づき、令和3年度の研究成果であるフッサール現象学およびヴァイツゼッカーの人間学を基盤とした教師の実践知を基盤として、より具体的な指導事例についての考察を通して教育現場における指導方法の構築について検討を進めた。 おもに令和4年度は令和3年度に学会発表をおこなった、緘黙傾向の児童生徒や発達障害の児童生徒の指導方法の構築に加え、不登校児童生徒の指導方法の検討をおこなうことができた。 この成果を、「自閉症スペクトラム傾向のある児童生徒の指導方法に関する現象学的一考察」(『生徒指導学研究』第21号)、「緘黙傾向が見られる児童生徒の理解に関する現象学的一考察」(『学校教育研究』第37巻)、「不登校児童生徒の指導の方法に関する現象学的人間学的一考察」(『教師教育と実践知』第7巻)、「不登校児童生徒の身体性に着目した指導についての人間学的一考察」(日本臨床教育学会第12回研究大会)などで発表した。 これらの研究成果により、さまざまな課題が見られる児童生徒の指導のあり方を現象学的・人間学的な立場から捉え直し、当初の研究実施計画の通り、教育実践の指導過程における一般性を有した実践知と指導方法を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度・令和4年度の教師の実践知および教育現場における指導方法についての研究成果をふまえ、現職の教師との対話により指導方法の有用性を検証することを目指す。具体的には、現職の教師たちが抱える具体的な指導事例の検討を研究代表者が所属する日本大学文理学部教職センターが実施している「教育実践力研究会(事例検討を中心に年に数回実施・現職の教師が多数参加)」において実施する。参加する現職の教師たちの具体的な指導事例における課題について聴き取り、現場において指導が困難な事例について現象学的・人間学的な観点から分析をおこなう。このことから、具体的な指導場面で有効な指導方法を導き出す際の、これまでの研究成果の有用性を検証する。現場での指導方法について、現職教師とのリフレクションや意見聴取を通して研究成果と教育実践の往還のしくみをつくり、研究成果の教育現場への適用方法を明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症等の影響により、所属している多くの学会大会等がオンライン開催またはハイブリッド(対面・オンライン)開催となり、当初計画していた調査研究をおこなうための旅費の支出が抑えられたため、次年度使用額が生じた。今後の使用に関しては、対面での調査研究が再開することによる旅費及び調査研究にかかる物品費、オンラインでの調査及び研究発表環境の充実を図るための整備費用としての物品費に充当することを計画している。
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