2023 Fiscal Year Annual Research Report
Examination of Practical Knowledge and Teaching Methods for Students with Psychological Problems in Regular Classes
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21K02612
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
土屋 弥生 日本大学, 文理学部, 教授 (80822246)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 現象学的教育学 / 人間学的教育学 / 発達障害 / 不登校 / 本質直観 / 実践知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,課題が見られる児童生徒に対する指導・対応について,教育現場での指導実践に役に立つ実践知と有効な指導方法を現象学的・人間学的な立場から明らかにすることであった。 教師に求められる実践知について検討した結果,まず,教師が児童生徒の本質をとらえるために,現象学的な意味で自然的態度から超越論的態度への態度変更をおこなうことが有効であることが明らかになった。また,発達障害の児童生徒の理解においては,ヴァイツゼッカーの意味で児童生徒の「主体性」そのものを受けとめ,児童生徒独自の「世界(Welt)」を理解するという人間学的理解が重要であることが解明された。 さらに,課題が見られる児童生徒の指導方法の検討をおこない,自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある児童生徒に対する現象学的な発生的分析の方法を用いた新たな指導方法を提示することができた。具体的には,ASDの児童生徒が歩むことができる「道」を想起し,次にこの「道」を構成するさまざまな「意味」の連関を現象学的な発生的分析の方法を用いて解明し,児童生徒が迂回して歩むことのできる「回り道」を考案するというものである。このように,本研究では発達障害が見られる児童生徒に対する新たな指導方法構築のための手順と枠組みを具体的に提示することができた。また,不登校児童生徒の指導の方法に関する現象学的人間学的な考察をおこない,「児童生徒の観察」,「児童生徒との交信」,「児童生徒行動・心情の代行的な把握」,「指導計画の作成と介入時期の判断」といった指導方法論上重要となる教師の活動を取り出すことができた。 学校教育現場で指導に困難が生じる可能性が高い児童生徒の指導において,本研究で得られた方法論を用い,メンターおよび教師集団が検討,共有をおこなうことによって,より適切で実効性のある指導につながることが明らかになった。
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Remarks |
【学会以外での発表】 土屋弥生「いじめの構造から考える未然防止のための具体的方法」日本大学教職センター・教育実践力研究会(2023年7月1日)
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